文化放送『くにまるジャパン』に中原俊明代表弁護士が出演/366回テーマ 「介護家族の監督責任」編

2016年03月22日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

代表の中原です。

本日のくにまるジャパンでは,今月の初旬に出た「介護家族の監督責任」に関する最高裁判例についてお話ししてきました。

事件があったのは,今からおよそ8年前。当時91歳で,認知症を患う男性が,駅構内の線路に立ち入り,列車にはねられて亡くなるという痛ましい事故が起きました。
この事故に対し,鉄道会社は,振替輸送などの損害が出たとして,男性の家族に対して,およそ700万円の損害賠償を求める裁判を起こしていました。

民法では,認知症などで責任能力がない人が損害を与えた場合,被害者救済として「監督義務者」が原則として賠償責任を負う,ということになってます。
そのため,第一審では男性の妻と長男の監督義務が認められ,第二審では同居していた妻のみ監督義務が認められて,いずれも「損害賠償しろ」と命じられましたが,報道でご存知の方も多いと思いますが,最高裁では「賠償しなくていい」という判決が出ました。

最高裁では,どんな場合に監督義務が認められるかが,ポイントとなっていて,長男は20年以上も別居していて,実際には介護に携わっていませんでしたし,奥様は,事故当時85歳で両足に神経マヒなどあり,要介護認定を受けていました。
この状況では旦那様を監督することは現実的に無理です。
結果,監督義務は認められず,賠償責任もないということになりました。

この裁判は,いわゆる「老老介護」の状態で,ヒトゴトじゃないという方がたくさんいらっしゃって,「介護でヘトヘトな家族に対して365日24時間監視しろというのか」と下級審への批判が強く,そのため,今回の最高裁の判断はとても注目されていました。

また,認知症の方の問題では,運転中に事故を起こしたり,あるいは刃物で人を傷つけるといった問題も起きています。こうした場合には,車や刃物の管理が適切だったか,といった要素が加わりますから,違う結論になるかもしれません。この最高裁判決を受けて,個々のケースごとに,きめ細かに検討していくことになります。

超高齢化が進んでいますから,同じような紛争はこれからどんどん増えていくでしょうし,私たちの仕事にも,大きな影響が出てくると思います。
半年ほど前,少年が蹴ったサッカーボールが原因で起きた事故で親の監督責任を認めない判決を紹介しました。その判決と合わせて,今回の判決は,監督責任について,これまでの被害者救済に重きを置いた損害賠償の流れを,変えるものであるかもしれません。

【出演情報】
◇日時
 毎週火曜 9:45~
◇放送局
 文化放送(関東エリア)
◇番組名
 『くにまるジャパン』
◇コーナー名
 「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇366回テーマ
 「介護家族の監督責任」編
◇出演
 番組MC 野村邦丸さん
 番組パーソナリティ 鈴木純子さん
 法律事務所ホームワン 中原俊明 弁護士