文化放送『くにまるジャパン』に中原俊明代表弁護士が出演 191回テーマ 「横領の基本的知識」編

2012年10月23日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

文化放送 『くにまるジャパン』
“得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室”

出演
・番組MC 野村邦丸さん
・番組パーソナリティ 鈴木純子さん
・法律事務所ホームワン  中原俊明 代表弁護士

191回 テーマ 「横領の基本的知識」編(10月23日 午前9:45 ~) 

■放送内容要約(実際の放送内容とは若干異なります。)

邦丸
今日のテーマは「横領」です。最近、会社のお金を5億円もキャバクラ嬢に貢いだ経理課の元・係長ですとか、共謀して3億5千万自分の懐に入れてしまった経理担当者と営業担当者など、「横領事件」のニュースを耳にしますね。

中原
そもそも「横領」は、他人から預かっているものを勝手に自分のものにしてしまうことを言います。「窃盗」とどこが違うのかといえば、「窃盗」は人が持っているものを奪い取りますが、「横領」は、預かっているものを、取ってしまうわけです。取締役など、役職によっては特別背任罪になることもあります。

邦丸
つまり経理課員は、法律的には会社のお金を預かっていることになるわけで、それをネコババしたから「横領罪」ということになるわけですね。
たとえば、私が社長の「くにまる商事」で、経理担当の取締役・鈴木純子さんが100万円の使い込みをしたことに気づいたら、社長の私はどうすればいいんでしょう?

中原
必要なのは事実確認ですね。もし純子さんが出社していれば、近いうちに姿をくらます可能性が高いので、時を置かず、始末書を書かせて事情聴取しておくことが必要です。使い込みの内容も書面で作成させ、使い込んだ時期、やり方、金額、そして使い道を明らかにしておいてください。また純子さんの通帳のコピーなど、証拠をとっておく必要もあります。

邦丸
スピード第一ということですね。

中原
もしお金が残っているなら、持ってこさせるか、あるいは「仮差押」することを検討します。本人や身元保証人にめぼしい財産があれば、まず「仮差押」。逃げずに出社しているなら具体的な弁償案を提出させます。

邦丸
純子取締役がお金を使いきっていたらどうすればいいでしょう?

中原
身元保証人に払ってもらうか、あるいは、親族には法的な責任がないのであくまで任意になりますが、親族から援助をしてもらうなど、返済方法が決まったら、公正証書など、強制力のある公的な文書を作りましょう。滞納した場合に備え、担保設定も検討したいところです。同時に、刑事事件として告訴するかどうかも検討します。

邦丸
いずれにしても専門家のアドバイスが必要ですね。
逆に、純子取締役が社長の私の横領に気づいたらどうしますか?

中原
この場合は。邦丸社長の行為は、刑法253条で言う「業務上横領罪」となり、刑事責任が生じます。純子取締役は、社長の民事責任を追及し、社長が懐に入れた会社の金を取り戻さねばなりません。代表取締役である社長を取締役会で解任し、新たな社長を選び、責任を追及する訴えを起こしてもらう、というのが一般的な流れになると思います。

邦丸 
この場合、経理担当の純子取締役には罪はないんでしょうか?

中原
取締役は代表取締役、社長を監督する義務があります。しかし不正を見抜けず、会社に損害を与えたわけですから、純子取締役も、会社や株主から責任を問われる可能性があります。自分が横領してなくても、立場によっては責任を問われるかもしれないのが、取締役という立場です。
横領、使い込みといった事態は意外と身近なトラブルです。来週も、横領に巻き込まれたらどうすればいいか、会社がとるべき対策などについてお話しようと思います。