文化放送『くにまるジャパン』に山田冬樹代表弁護士が出演 169回テーマ 「相続放棄の落とし穴」編

2012年05月22日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

169回テーマ 「相続放棄の落とし穴」編
2012年5月22日 午前9:45~放送

文化放送 『くにまるジャパン』
“得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室”

出演
・番組MC 野村邦丸さん
・番組パーソナリティ 安西真実さん
・法律事務所ホームワン 山田冬樹代表弁護士

169回テーマ 「相続放棄の落とし穴」編(5月22日 午前9:45 ~)

■放送内容要約(実際の放送内容は少し異なります)

邦丸
知れば知るほど、きちんと準備をしておかないと、大変なことになる可能性があるのが相続問題です。よく「相続放棄」という言葉を聞きますが、これは、相続人が相続を放棄しますっていう文章に、名前を書いたり、判を押したりするんですかね。

山田
その点をよく誤解している方がいらっしゃるんですが、相続放棄というのは、親がなくなったことを知ってから、3ケ月以内に、家庭裁判所に書類で申請する必要があります。
そうするとしばらくして、裁判所から質問書が送られてきて、それに回答して裁判所に送り返します。またしばらくすると裁判所から相続放棄を受理しましたという通知が送られてくる。これが相続放棄なんですね。

邦丸
裁判所に申請するのが、法律的な意味でちゃんとした相続放棄なんですね。

山田
そうなんです。ですから、例えば、親が多額の借金を抱えていて、長男が「俺が家を相続する代わりに、借金は全部俺が支払うから」と言って、そういうことを書かれた書類に兄弟みんなが判を押したとしますね。でも、こういった書類に判を押しても、ほかの兄弟は相続放棄したことにならないんです。

結局この長男が借金を返せず、家を売っても多額の借金が残ったという場合、他の兄弟に各人の相続分に応じて借金の請求が行ってしまうんですね。

邦丸
それは怖いですね~。
借金がからまなくても、親子の間で「おふくろが全部相続しろよ、俺たちは財産いらないから」なんていうやりとりってありますよね。そのやりとりを受けて、亡くなった人が生前に「妻が全財産を相続する。子どもたちは相続を放棄する」なんていう書類を作っていたとしても、その書類は無効なんですか?

山田
そういった書類でも、相続放棄という効果はありません。ただし、「遺産分割協議書」としては有効なんです。兄弟間ではそういう約束をしたということで、兄弟間では有効なんですよ。

そうすると、さっきの借金の話はどうなんだと言われそうですが、借金となると、銀行などの第三者が関わってきますよね。銀行からすれば「そんなこと身内で決めたことでしょう。こっちは何も承諾していない以上、みんなで借金を払ってくださいよ」ということなんですね。

では、先ほどの例で、子どもたち全員が相続放棄すれば、お母さんが全財産を相続するということになると思いますか?

邦丸
え? 書類に書いてある通り、お母さんが全財産を相続できるんじゃないんですか?

山田
相続人が誰になるかについては、法律で決められた順番があります。子どもがいなければ、両親、両親がいなければ兄弟が相続します。子どもが相続放棄すると、「はじめから子どもはいなかった」という扱いになって、次の順位の両親、つまり亡くなった人の子どもからみた、おじいちゃん、おばあちゃんが相続人になります。おじいちゃん、おばあちゃんがすでに亡くなられていたら、次の相続順位のおじさん、おばさんが相続人として加わってくることになるんですね。
ですから、このケースでは、子どもたちは相続放棄をするのではなく、遺産分割協議で、 「母の取り分を100、子どもを0」と決めなければならないんです。

邦丸
子どもたちは母親に譲るつもりだったのに、おじいちゃん、おばあちゃんに取り分がいってしまう!なかなかそういうところまで、気が付かないですよね。

山田
まだ他にも落とし穴はあります。たとえば、子ども二人のうちの一人が「親の面倒を見ることはしない代わりに、一切の相続権を放棄する」という書類に名前を書いて、判を押して、家を出て、以後一切親の面倒を見なかったとします。
ところが、お父さんが亡くなった後で、その家を出た子どもが「俺にも権利があるから財産をよこせ」と言ってきたとします。

邦丸
普通に考えれば、「何バカなこと言ってんだ」という話ですよね。

山田
実はこれ、ちゃんと権利があるんです。

邦丸
ホントですか!?

山田
相続放棄というのは、あくまで被相続人であるお父さんが亡くなってからの話で、お父さんが生きている間に相続放棄しても無効なんですよ。

とにかく、相続放棄だけでも、いろいろと難しい問題がほかにもあって、生半可な知識で処理したりすると、あとで取り返しのつかないことになりますので、ぜひ注意していただきたいですね。

邦丸
「相続放棄」という言葉は知っていても法律的にはどうなのか、きちんとわかった上で行わないと、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性がありますね…。相続については、実際、重い決断をする前に、専門家に相談するのが一番ですね。

得々情報 暮らしインフォメーション
ホームワン法律相談室でした。