文化放送 『寺島尚正 ラジオパンチ』に山田冬樹代表弁護士が出演

2009年05月07日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

文化放送『寺島尚正 ラジオパンチ』
“ 聞き耳パンチ ” 

出演
・番組MC 寺島尚正さん
・法律事務所 ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

テーマ「貸金業法の改正」(2009年5月7日 12:35~放送)
■放送内容要約(実際の放送内容は少し異なります)

寺島
ここ数年「グレーゾーン金利」という言葉をよく耳にしますが、詳しく教えていただけますか?

山田
まず「利息制限法」という法律が利息を規制しているんです。借りている金額が10万円までなら年20%、100万円までなら年18%、100万円以上なら年15%の利息さえ払えばいいとされています。
ただ「貸金業法」という法律もあり、この法律は、年29.2%までの金利を取っていいことになっています。 ただし、きちんとした契約書や領収書を借り手に渡した上で、借り手が「高い利息でも自らの意思で払う」というのなら、 利息制限法の利息を超える金利を取っても良いとされているんです。 これが「グレーゾーン金利」と言われ、お金の貸し借りをわかりにくくさせています。

寺島
一方で「過払い金」というのもよく聞きますよね。長い間、高い利息を払っていた場合、払い過ぎていた利息を取り戻せるというものですが、なぜこういうことができるようになったのですか?

山田
お金を貸す側がグレーゾーン金利を取る場合、貸す度に契約書を作り、返してもらう度に領収書を渡すということをしなければなりません。裁判になれば、それらをひとつ一つ立証しなくてはならないので、非常に手間がかかります。だから、業者もグレーゾーン金利を主張しない場合がほとんどでした。
しかし、平成18年1月13日の最高裁判決の影響により、過払い金の請求が広まりました。
繰り返しになりますが、借りる側が自らの意思で払うのであれば、グレーゾーン金利を取っても良いことになっています。でも実際は、借りる側が年に15%とか18%の金利だけを払えばいいということはなく、貸金業者から「約束の金額を払わないと一括請求する」などと言われてしまいます。
最高裁はそこに目をつけ、「借り手は一括請求されるのが嫌だから、高い利息でも嫌々ながらも払っているのだ。これは自分の意思で払っているとは言えない。だから、グレーゾーン金利は取れない」という判決を出したんです。

寺島
ということは、グレーゾーン金利がなくなると、お金を借りる側からすれば楽になるのですか?

山田
そうなればいいと思うのですが、グレーゾーン金利の廃止とともに、「総量規制」というものができたんです。これは「借りる側の年収の3分の1以上の金額を貸し付けることを禁止する」という規定で、例えば年収300万円の人は、100万円以上借りられなくなります。ですから、収入が下がったり家計の出費がかさめば、借金を払えなくなる可能性が出てきます。
現在、改正した貸金業法を段階的に実施している最中で、グレーゾーン金利や総量規制の部分はまだ実施されていません。当初は2009年末までに実施予定でしたが、もう半年ほど延びるかもしれません。
今、借金がある人は、それまでに少しでも減るように頑張って返した方がいいですね。というのも、総量規制が実施されても、今、借りている分には影響しないからです。今29%近い金利を払っている人は、今後も払わなくてはなりません。

寺島
総量規制の導入に向けて、借金の額を少しでも減らしていくことが大切ですね。総量規制について、もう少し詳しく教えて頂けますか?

山田
以前はお金を借りる時、委任状に実印を押して印鑑証明書を渡してしまうと、業者に公正証書を作られてしまい、支払いが遅れると給料を差し押さえられるといったことがありました。借りる時はいろんな書類に名前を書かされるため、よく内容を理解せず署名してしまう場合が多いんです。公正証書によって、給与を差し押さえられて初めて事の重大さに気付く人も少なくありません。
しかし今回の改正では、業者が委任状をとって公正証書を作ることができなくなりました。
また、最近は、お金を借りる時に「保証会社の保証をつけるから、保証料を払ってくれ」と言ってくる業者が結構あります。
例えば、年利18%で50万円を借りても、保証料として借入金の10%(5万円)を払うと、合計で3割近い利息を払うのと同じことになります。今度の改正法では保証料を含めて、利息制限法の所定の利息の範囲内に収まるようにされています。

寺島
このように法律が改正されていくと、ある程度返済が確実な人にしか貸し付けできないことになりそうですよね。
すでに年収の3分の1以上借りている人は、ますます借りられなくなるため、いわゆる「ヤミ金」で借りる人が増えてしまいませんか?

山田
「ヤミ金」は10日で3割、1週間で2割の利息をとるのが当たり前で、年率でいうと1000%以上の金利です。改正前も、109.5%を超える金利を取るような貸金業者は「5年以上の懲役、1000万円以下の罰金」となっていたのですが、今回の改正で「10年以下の懲役、3000万円以下の罰金」になりました。
また、貸金業法の改正とは別に「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律」という法律があるのですが、こちらがヤミ金撲滅に一役買っています。ヤミ金が利用していると疑われる銀行預金口座を凍結できるようになったからです。さらには、一定の手続きの後、その口座の預金が被害者に分配されます。ですから、最近はヤミ金の相談が非常に減ってきました。