事業承継

M&A(親族外承継)企業の合併と買収におけるポイントと弁護士活用のメリット

M&Aとは合併(Merger)と買収(Acquisition)の意味です。 株式売買、事業譲渡、合併、資本参加等手法は様々です。M&Aというと、大手企業の世界の話と受け取られがちですが、最近は、第三者への事業承継の手段として、多くの中堅・中小企業による事由も多くなっています。 事業承継の場合、株式売買によるM&Aがほとんどです。

M&Aの難しさはマッチングの難しさにある

M&Aが通常の売買と違うのは、会社という商品の特質上、売り手と買い手のマッチングが非常に難しい点にあります。 普通の商品であれば、売り手は高値で買ってもらおうと、店頭で商品を陳列したり、広告をしたり、ネットで売りに出したりします。しかし、会社の売主は売りに出していることを極力知られまいとしています。どのような会社が売りに出ているかも見えないため、マッチングの確率がどうしても低くなります。

普通の商品であれば、商品の特徴を熱心に説明しますので、買い手もどんな商品かすぐ分かるので、商品比較も容易です。しかし、会社を売る場合、秘匿性が求められます。相手が本気で買うつもりがあると見極めるまでは、会社の情報の開示は最小限に抑えられ、商品比較が難しいのです。

また普通の商品であれば、類似のものが市場に出ていますので、大体この値段なら売れるという相場があります。しかし、会社はそれぞれに個性があり、相場がありません。また、会社を買うということは、その事業の将来を買うことになりますので、未来の値段をつける作業が必要で、価格の算定にどうしても不確定要素が入ってしまいます。

M&A仲介会社の役割

このような商品特性から、M&A売買には仲介会社というプレイヤーが不可欠になってきます。

仲介会社は、売り手企業と、秘密保持契約、提携仲介契約を結んだ上で、売り手企業の情報、どのような企業に売りたいかを聞取ります。そうして、一枚モノと呼ばれるA4一枚のサマリー程度のものと、事業の概要をより詳細に説明した企業概要書という2種類のパンフレットを作ります。

仲介会社は自社が抱える膨大な買い手リストとのマッチングを試みます(買い手は多数、売り手は少数と言うのがこの市場の特徴です)。これと思う会社を売り手に紹介し、売り手がゴーサインを出したら、仲介会社は買い手企業に、まず一枚モノを見せ、興味があるかどうかを見ます。

買い手が一枚モノを見て購入を希望したら、秘密保持契約を結んだうえで、買い手に企業概要書を渡します。買い手が追加情報を出すように求めたら、それを売主に取り次ぎます。

買い手が買う意思を明確にしたら、仲介会社は提携仲介契約を買い手企業と結びます。その段階で初めて詳細資料を買い手に開示し、買い手がこのまま売買協議を進めるか検討します。もちろん、この段階で売り手が、この買い手には売りたくないと判断したら話は終わりです。

双方、売買の意思を固めたら、トップ会談をします。トップ会談で重要なのは、「この社長になら売っていい」「この社長の会社なら買っていい」という、腹決めです。中小企業の場合の社風は、社長を見れば分かります。二人の社長が腹を割って経営理念、将来のビジョンをぶつけ合って話すうちに、買おう、売ろうという気持ちになるのです。この場では値段のことは話し合いません。この会談でスケジュールも決まります。

双方の社長が売買する気になったら、買収価格の交渉を始めます。非上場の会社の株式の価値を計算する方法はいろいろです。原価(COST)、収益(INCOME)、市場(MARKET)のどれに着目するかで、算定方法が違いますし、出てくる金額も違ってきます。仲介会社はこうした複数の算定方法を提示しながら、落とし所を探っていきます。

買収金額、実施時期の合意ができたら、基本合意書(LOI)を作成します。基本合意書では買主からの諸条件、買収監査の実施、独占交渉権の付与が合意されます。

その後、買収監査=デューデリジェンス(DD)が行われます。DDとは買い手企業が行う、売り手企業の事業の実体やリスクを適正に把握するための多面的な調査を言います。財務DD、法務DDが代表的ですが、案件によっては環境DD、不動産DD、労務DD、ビジネスDDなどが行われることもあります。

DDの結果を踏まえ、最終条件の交渉があり、最終合意ができれば、最終契約の締結となります。最終契約では、何を表明保証の対象とするかが一番重要です。DDもこのために行われるのです。

売買契約の主体は会社ではなく、株主個人ですから、取締役会決議は不要ですが、最終契約の3日~1週間前に契約締結のことを伝えます。従業員には最終契約日に、朝礼、終礼等の場を借りて説明します。それまでに情報が漏れてしまうと破談の原因となります。M&Aにおいて秘密保持は絶対であり、秘密保持に始まり、秘密保持に終わると言っても過言ではないのです。取引先、銀行には最終契約日以降あいさつに回ります。

最終合意後、譲渡承認手続が行われ、クロージング日を迎えます。クロージングとは代金と株を現実にやり取りすることを言います。契約の実行日とも言い表せます。

M&Aの進捗の時間的イメージ

一枚モノでの提案→秘密保持契約→提携仲介契約 1ヶ月
提携仲介契約→トップ会談→基本合意契約 1~2ヶ月
トップ会談→デューデリ→最終契約 1~2ヶ月
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M&A成立のポイント

売り手社長との相性

中小企業は社長の作品であり、社長の経営理念がそのまま企業文化となっています。

売り手の譲渡理由

社長がなぜ譲渡しようと思っているかが重要です。優良な企業でなければ買ってもらえませんが、優良な企業であればあるほど、買い手は「なんで売りに出すのか」との疑問を自然に持ちます。

売り手側の希望価格

売る方は高く売りたいし、買う方は安く買いたいというのが、当然です。相場からかけ離れた金額を希望している場合はまとまる話もまとまりません。

営業力

営業が強いのか、弱いのか。営業が弱くても利益をたたき出している会社は、それだけのポテンシャルを持っているといえます。営業が強い会社は、営業が弱い会社にとって自社のポテンシャルを上げるいい機会になります。

キーパーソン

中小企業の場合、社長以外にキーパーソンがいて、その人が技術や営業の中核を担っていることがあります。M&A後、キーパーソンが会社を辞めてしまったら、買い手にとっては打撃です。こういったことが起こらないか。起こらないためにはどうしたらいいかを検討する必要があります。

株主構成・株券の確認

株券発行会社であるにもかかわらず、株券が発行されず、当然株券の交付を欠いたまま株式が転々譲渡している場合、株式譲渡の効力は生じません。株券を発行し、改めて交付することで譲渡の効力を確定させる必要があります。また、株券を発行しているが紛失してしまっている場合は、株券喪失登録手続きが必要になりますし、名義株主がいる場合、名義株主の解消の必要も出てきます。

労務管理

就業規則・賃金規程・退職金規程、労使協定等に不備はないか、給与・退職金等の支払いは適正か、労使紛争はないか、組合はあるか、組合との関係はどうか、高齢者雇用・派遣社員・契約社員の労務管理は適正か、といった点を、買い手企業はチェックします。法務DDでは、とくに未払い残業代が問題にされることが多いです。最終的には、表明保証が求められ、未払い残業代が発生したらその分賠償するといった形で処理される形が多いでしょう。

簿外債務

会社で保証していないか、訴訟を抱えていないか、税務署と税処理の適否で見解を異にしている点がないか等、簿外債務の処理は早めにしておかないと、買収価格に影響が出ます。

主要取引先との関係確認

特定の従業員が取引先と密な関係がある場合、当該従業員が退職しないかどうかが重要になります。取引先をつなぎとめるために、元オーナーにしばらくは社内に残るよう求められることもあります。チェンジ・オブ・コントロール条項が付されている契約が最近多く、同条項によって契約が解除されるリスクがどのくらいあるかが重要になってきます。ショッピングセンターなどはたいていこの条項が入っており、M&A後退去を求められることが多く、既存店舗を維持できないということもあります。

業界規模、成長性

許認可業種である、大手企業との取引口座を持っている等、参入障壁の高いことは売り手企業の企業価値を高める要素になります。業界内でのポジション、競合商品・協業業者の存在も、成約に影響します。ここでは双方のシナジー効果の見極めが成否を握っています。

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