不動産賃貸

消費者契約法消費者契約法を犯した際のリスク

賃貸契約書は賃貸人側で作るため、どうしても賃貸人側に有利な契約になってしまいます。しかし、賃貸人が事業者で、賃借人が消費者という場合、消費者契約法が適用されます。

同法10条は、ある契約条項が、1)民法上の規定の適用による場合に比べ、消費者の権利を制限し、または消費者の義務を加重し(前段)、2)信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものである場合(後段)、当該条項は無効となるとしています。

消費者支援機構関西が、不動産賃貸業等を営むA社に対し、同社の賃貸借契約中、下記条項が消費者契約法9条ないし10条違反に該当すると訴えた裁判があり、大阪高裁は平成25 年10 月17 日付で、下記のとおり、関西の主張を一部認め、一部否定する判決をしました。参考になると思われるので、ここに掲載します。

消費者支援機構関西(以下関西)
「破産、民事再生…の申立あった場合解除しうる。」とあるのは無効。
判決
消費者契約法により無効。
理由
ア)これらの事由が発生したからといって、直ちに賃貸借契約当事者間の信頼関係が破壊されていると評価すべきではない。イ)賃貸人は、家賃等を2ヶ月以上滞納すれば、催告の上、契約を解除できるのであるから、それで十分。
関西
「後見開始、保佐開始した場合は解除できる。」とあるのは無効。
判決
消費者契約法により無効。
理由
成年後見人や保佐人が付され、同人らによって財産管理がされ、近隣紛争の解決が期待できるから、賃貸借契約の信頼関係破壊には当たらない。
関西
「明渡しが遅れた場合、家賃2ヶ月分に相当する賠償額を支払う。」とあるのは無効。
判決
消費者契約法10条の適用は無い。
理由
ア)賃借人の明渡しのためには、訴訟、強制執行当、相当の費用や時間もかかるし、その費用の確実に回収できる訳ではなく、回収に至るまでの時間を金額的に評価すれば、賃貸人に通常生ずべき損害は賃料相当額にとどまらない。
イ)賃貸人の損害の填補、賃借人の明渡義務の履行を促すという観点からして、賃料以上の一定の額を損害賠償額の予定として定めることは、合理性があり、賃料の2倍という額は、高額過ぎるとまではいえない。
関西
「滞納家賃を督促する手数料を賃借人が1回あたり3、150 円支払う。」とあるのは無効。
判決
消費者契約法10条の適用は無い。
理由
督促には、内容証明郵便を送ったり、従業員が訪問し直接督促する等、相応の費用を要することが少なくない。それを超える費用が発生した場合、逆に賃借人は定められた金額を支払えば足りるという点では賃借人に有利な面もある。
関西
自然損耗を超える汚損の有無にかかわらず賃借物件の補修費用(面積に応じた一定額)を賃借人に負担させる。
理由
ア)借主が通常の清掃を実施している場合の専門業者によるハウスクリーニングクリーンアップ代が借主の費用負担と明示しているから、賃借人にとって、クリーンアップ代の支払によって負担する部分について明確に認識することができる。 イ)賃料から上記クリーンアップ代の回収をしないことを前提に賃料額が合意されているとみるのが相当である。
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