被災地「二重ローン」開始7ケ月利用低迷で年間目標の2%

2012年04月20日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

東日本大震災で被災した個人や事業者が新たな借金を抱える「二重ローン問題」で、官民一体で策定した個人向け救済制度が開始から7カ月以上経過したにもかかわらず、年間目標の約2%の利用にとどまることが10日、分かった。住民の高台移転などの計画が定まらず、生活再建自体が遅れていることに加え、厳格な利用条件も一因になっている。 震災では、住宅ローンや事業資金など過去の借金を抱えた個人、事業者が震災で立て直しのため新たな借金を重ねる二重ローン問題が復興の大きな課題として浮上。問題の解消に向けて、全国銀行協会などは昨年8月、個人向け救済制度「個人版私的整理ガイドライン(指針)」の運用を始 めた。

政府の方針に基づき、被災者を自己破産など法的整理に追い込まずに既存債務を減免する仕組みで、利用者は信用履歴が傷ついて新たな借金を組めなくなるなどの事態を避けられる利点がある。

政府は被災地の債務者数をもとに年間1万件の利用を想定したが、実際に利用にこぎつけたのは180件(今月6日時点)にすぎず、利用は低迷している。

政府の予算編成が大幅に遅れたことや、住民の合意形成が難しいこともあり、自治体の高台移転など住宅再建計画が固まらないことが大きな要因となっている。

弁護士らでつくる第三者機関の個人版私的整理ガイドライン運営委員会は「新たな住宅ローンを考える段階にまで至っていない被災者は多い」と利用が広がらない背景を説明する。

だが、そもそもは同制度の使い勝手の悪さも利用を阻んだ面が強い。 例えば、当初、救済対象の条件として手元に残せる資金の上限を99万円に設定したが、「生活再建には少なすぎる」との声が根強く、運営委は1月に入ってようやく上限を500万円に引き上げた。

二重ローンをめぐっては、企業向け救済策の本格的な運用もこれからだ。復興支援のスピード感の欠如は否めない。

※引用
4月10日 産経新聞
「http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/economy/policy/555799/」