相続・兄弟間に不満があると…

2014年10月28日に文化放送「くにまるジャパン」に出演した際に話した内容を掲載しています。 テーマは「相続・兄弟間に不満があると…」です。

パーソナリティ
今日は「相続」のお話です。
子どものころ、仲が良かった兄弟でも、遺産相続になると揉めてしまうことがあるそうですね。
弁護士
残念ながら、その通りです。
遺産相続に関する争いは、どんなご家庭でも起きる可能性があります。
何人か兄弟がいると「兄貴は親と同居で家賃がかからなかった」あるいは「弟だけ大学に行かせてもらった」といった具合に、「あいつだけ“えこひいき”されていた」という不満が溜まっている。こういうことはよくある話で、相続の時のトラブルの原因になることがあります。
特に、生前に一人だけ、財産を贈与されていた場合、争いが起こる可能性が高くなってきます。
パーソナリティ
漠然とした不満ではなく、ちゃんと「お金」という形になっちゃっていますもんね。
弁護士
生前に分けてもらった財産は「特別に受けた利益」、法律的には「特別受益」と言います。
わかりやすい数字で説明しますと、父親に2000万円の財産があり、生前に、兄に1000万贈与したけれど、弟にはゼロという場合。兄がもらった1000万円が特別受益に当たります。
父親が亡くなって相続になったとき、本来は2000万あったはずの遺産のうち1000万が兄に「前渡し」されたということですね。
パーソナリティ
兄に前渡ししたのであれば、残りの1000万は全額、弟のもの?
弁護士
その通りです。
贈与じゃなくても、たとえば、兄の借金1000万を親が肩代わりしていた、というケースでも同じです。
パーソナリティ
生前に前渡しを受けた分は、相続ではもらえないわけですね。
弁護士
はい。ただ、今のは、わかりやすい例ですが、こちらはどうでしょう。
父親と兄は旅行が好きだが、弟はそれほどでもない。二人でしょっちゅう海外に遊びに行っていたが、費用は全部、父親もち。
金額はトータルで1000万になってしまいました。
パーソナリティ
やっぱり前渡しになりそうな気がしますが…。
弁護士
実は特別受益にはなりません。
特別受益とされるのは、「生活の基礎になるようなお金」に限られます。
海外旅行は娯楽費用なので、特別受益ではないんです。
パーソナリティ
「生活の基礎になるようなお金」というと具体的にはどういうもの…?
弁護士
たとえば、父が自分のマンションのひと部屋に長男一家をタダで住まわせていたら「特別受益」と見られる可能性は大です。
「住居費」は、家を借りていると家計の3割にもなりますから、「生活の基礎になる」と言えます。
ただし、同居していても、親の介護をしている場合は、他の兄弟と比べて負担も重いので、特別受益になるかどうかは微妙なところだと思います。
パーソナリティ
なかなか難しいですね。
さっき話に出ていた、弟さんだけ大学、それも授業料の高い私立大学に行ったというケースは?
弁護士
それも特別受益と見られる可能性はあります。
ただ、どの子も進学できる経済状況だったのに、弟はマジメに受験し、兄貴は遊んでいて進学しなかったという場合は特別受益には 当たらない、ということになるでしょう。
兄もその気があれば利益を受けることができたわけですから。
このように、遺産の前渡し「特別受益」は、個々のケースによって判断が異なってくることがあるんです。
パーソナリティ
ラジオを聞いて、自分の場合はどうなんだろう…と、いろいろ思い当たる方もいらっしゃるでしょう。
こじれる前に弁護士にお話しした方がいいかもしれませんね。

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