企業法務コラム

【企業法務】令和3年改正特商法 電話勧誘販売のメールによるクーリングオフが明文化

「電話勧誘販売」とは、事業者が、消費者に電話をかけ、あるいは広告・DM等を通じて消費者に電話をかけさせ、その電話において行う勧誘によって、消費者からの売買・サービス提供契約の申込みを郵便・ファクス・電話・メール等により受け、または契約を締結して行う販売またはサービスの提供のことをいいます。こうした電話勧誘販売の場合、契約後に消費者に冷静に考え直す時間を与えるため、契約書面等を受け取ってから8日以内であれば一方的に(無条件・無理由で)契約を解除できることになっており、この制度をクーリングオフと言います。

クーリングオフは法律上「書面による」こととされていますが、これは後々言った言わないで争われることのないように、書面によるよう規定されているだけで、電話や電子メールでもクーリングオフをすることは可能というのが裁判所の一般的考え方でした。

このため令和3年の法改正で「書面又は電磁的記録による」クーリングオフも認められることになりました。
電磁的記録には電子メールのほか、電子メールのほか、USBメモリ等の記録媒体の送付、事業者が自社のウェブサイトに設けるクーリング・オフ専用フォーム等により通知を行う場合も含まれます。

事業者においては、「電子メールでクーリング・オフを行う場合には、以下のアドレスにお送りください。」などと合理的な範囲内でクーリング・オフに係る電磁的記録による通知の方法を特定し、それを契約書面等に記載することにより、事業者が確認しやすいクーリング・オフに係る電磁的記録による通知の方法を示すことが必要になってきます。

ただ、事業者において一方的に通知の方法を不合理なものに限定すること、例えば、電子メールでアポイントを取るような訪問販売においてクーリング・オフを書面のみに限定し、電子メールによる通知を受け付けない場合や、契約締結に際して消費者から事業者に対する連絡手段としてSNSを用いたにもかかわらず当該SNSを用いたクーリング・オフの通知を受け付けない場合等はクーリング・オフの方法を制限する消費者に不利な特約に該当し、無効となるものと考えられます。

2022年05月18日
法律事務所ホームワン