高齢者施設 6万人が身体拘束

2015年04月13日
法律事務所ホームワン

4月11日付に日経の朝刊によると、全国の介護施設などに入っている高齢者の約6万人が身体拘束を受けていると推定する調査結果が得られたそうです。今年1~2月、厚労省の事業としてNPO法人全国抑制廃止研究会が施設に対するアンケート調査を実施した結果得られたもので、拘束を受けている人は入所者全体の2.3%、要介護度の高い人が入る施設では1割を超えていたとのことです。
介護保険法に基づき定められた「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」の11条では指定介護老人福祉施設は…当該入所者又は他の入所者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束その他入所者の行動を制限する行為を行ってはならない(4項)。
指定介護老人福祉施設は、前項の身体的拘束等を行う場合には、その態様及び時間、その際の入所者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由を記録しなければならない(5項)とさだめられています。
厚労省が作成した「身体拘束ゼロへの手引き」によれば、「緊急やむを得ない場合」とは以下の3つの要件を満たし、かつ、これらの要件を確認する等の手続きが極めて慎重に実施されている場合を指すとされています。

1.切迫性 利用者等の生命又は身体が危険にさらされる可能性が著しく高い
2.非代替性 他に代替する介護方法がない。
3.一時性 行動制限が一時的なものである

ただ、運営者の側からは、「必要悪」という本音も漏れ聞こえます。被介護者が徘徊する等して死傷した場合には、介護施設が賠償責任を負うことになります。人手不足、財政的理由から、拘束がないとやっていけず、いざ拘束しなかったことで賠償責任を負わされるくらいなら、拘束するしかない、というのがその理屈です。

東京地裁平成8年4月15日付判決は、78歳の女性が入院28日目にベッドから転落し側頭部を強打して死亡した事故について病院が遺族から損害賠償を求められた事件で、次のような判断を示し、病院の損害賠償責任を肯定しました。

ア.前にも同様の事故があり2回目の転落が予見できた。
イ.しかし、この予見に基づいていかなる予防措置をとるべきかは、1)予測される結果の重大性、2)結果発生の蓋然性、3)結果発生防止措置の容易性、4)その有効性、5)その措置を講ずることによる医療上、観護上の弊害等を総合的に考慮して判断するべきである。
ウ.予防措置として、抑制帯を使用することが考えられるが、抑制帯は患者の身体の自由を拘束し、精神的苦痛が大きく、リハビリの妨げになるため、病院側に抑制帯を使用すべき法的義務はない。
エ.しかし、病院は、1回目の転落後、看護方針として頻回の訪室を決めておきながらそれを実施していなかった。

身体拘束をしなかったことに過失はないとしたのは良いのですが、頻回の訪室により、転落を防ぐことができたかと考えると、さらに検討の余地があると言えるでしょう。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹