企業法務コラム

最高裁判決 非上場株式を理由に収益還元法価格の25%カットはアウト

平成27年3月26日付最高裁判決で「非上場会社において会社法785条1項に基づく株式買取請求がされ、裁判所が収益還元法を用いて株式の買取価格を決定する場合に、非流動性ディスカウントを行うことは許されない」との判断が示されました。
会社法785条1項は「吸収合併等をする場合には、反対株主は、消滅株式会社等に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる。」と定めています。そこで次に非上場株式の「公正な価格」をどのようにして決めるかが問題となります。株式の評価方法としては、類似会社比準法式、純資産方式、配当還元方式、収益還元方式などの方法があります。この最高裁の原審裁判所は札幌高裁でしたが、同裁判所は「収益還元法を用いるのが相当であるところ、A社において将来期待される純利益を予測し、その現在価値を合計すると、約3億6158万3000円となる。」としながら、非上場会社の株式は上場会社の株式のように株式市場で容易に現金化することが困難であるため、非流動性ディスカウントとして上記金額から25%の減価を行い、その結果を発行済株式の総数338万7000株で除すると、A社の株式の公正な買取価格は、1株につき80円となる。」としました。
しかし、最高裁は「収益還元法は当該会社において将来期待される純利益を一定の資本還元率で還元することにより株式の現在の価格を算定するものであって、同評価手法には、類似会社比準法等とは異なり、市場における取引価格との比較という要素は含まれていない。」として、収益還元法をとりながら非流動性ディスカウントを行うのは不当としたのです。
こうした会社の組織変更だけではなく、株式の相続人に対する売り渡し請求の場面でも、価格をどうするかが問題となりますので、株価の算定方法をどうすべきかは、今後ますます議論される場面が増えてくるものと思われます。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2015年04月03日
法律事務所ホームワン