公契約条例 都内で広がる

2014年11月14日
法律事務所ホームワン

都内の自治体で公共工事に携わる労働者の賃金の適正化に乗り出す動きが相次いでいる。一定水準の賃金支払いを条例で義務付けるもの。こうした条例は「公契約条例」と呼ばれる。世田谷区議会は9月に可決…来年4月から施行する。
区が発注する3000万円以上の公共工事の受注企業に、区長が定める下限額以上の賃金を従業員に支払うことを求める。具体的な賃金水準は学識者らからなる委員会によって検討する。区内に事業所を構える地場企業が受注しやすいような入札制度の改革を同時に進める。
10月に公契約条例を施行した千代田区は「強制型」で、賃金が下限額に達していない企業には区が是正要求する。それでも是正がなされなかった場合には、契約が解除される。4月施行の足立区も契約解除の規定を設けている。
常用大工(都内)の日給は1万6739円。13年に比べ2%弱しか上昇していない。国は建設業の日給の目安である「設計労務単価」を1年間で1割近く上げている。

※参照
2014年10月31日 日本経済新聞
公契約条例、都内自治体で相次ぐ 人材集め入札不調防止

(評)
最近、各地の自治体で、公契約条例を制定しようとする動きが出てきている。「公契約条例」は、正式には「総合評価一般競争入札制度」という。通常の入札は、価格に偏する余り、品質に疑問が残るものも出てくる。そこで価格面と技術面を1:2で評価するなど、技術面も考慮に入れた形で入札を行うため、この制度が活用されてきた。価格だけを重視すると、ダンピング競争になり、結局そのしわ寄せは下請企業に行くという配慮も背後にある。通常の入札と異なり、入札後落札までの間に技術審査が入ってくる。コンペ方式ともいわれる企画競争方式と一見似ているが、企画競争方式は随意契約であるため、これとも異なる。
現在、職人が足りず、落札価格が高騰している。しかし、そうした価格高騰の割に、建設労働者への賃金に十分反映されていない。ここまで職人が減って来たのは、報酬単価の激減が原因だ。昔はドロップアウトしても、建設で身を立てれば、それなりの収入が入ってという、建設ドリームがあったが、バブル崩壊・財政赤字の削減による公共工事減で、少ない仕事をみんなで分けるため、価格競争が激化。そのしわ寄せは全て職人、建設労働者に来た。そのため、皆現場を去っていったのである。建築価格の高騰を、職人等への報酬増につなげていかなければ日本の建設業は崩壊しかねない。
国交省も、建設業の素晴らしさを称える作文を公募したり、とか馬鹿なことに金を使うのは止めて、この問題に性根を据えて取り組むべきだ。
ただ、最近、この制度を利用し、品質面の確保以外の政策的要素も考慮したものが出てきている。自治体の入札だと地元の事業者を優先したり、ISO取得企業、リサイクルへの取り組みだったりと、そうした要素も考慮するようになっている。
自治体のこうした取り組みには、民に対する不当な干渉だと批判する向きもある。しかし推進派は次のように反論する。1999 年に改正した地方自治法では、施行令167条の10 の2 項第1 節で「価格その他の条件が当該地方公共団体にとって最も有利なもの」を落札者とすることが、認められている。自治体は、予算的な観点だけでなく、地域の発展という使命も有している。したがって、最も有利な条件の中に、賃金などの労働条件を含ませることは可能ではないか、と。

地方自治法施行令167条の10の2
普通地方公共団体の長は、一般競争入札により当該普通地方公共団体の支出の原因となる契約を締結しようとする場合において、当該契約がその性質又は目的から地方自治法第234条第3項本文又は前条の規定により難いものであるときは、これらの規定にかかわらず、予定価格の制限の範囲内の価格をもつて申込みをした者のうち、価格その他の条件が当該普通地方公共団体にとつて最も有利なものをもつて申込みをした者を落札者とすることができる。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹