企業法務コラム

暴力団向け債権買取急増 みずほ問題受け16倍

「預金保険機構が金融機構から買い取った暴力団など反社会的勢力(反社)向けの債権が、2014年は24億5千万だったことが29日、分かった。」「12年は5件で1億4千万円分、13年は10件で1億5千万円分だった。」から「前年の16倍に急増した」ことになる。
額面で買い取る訳ではなく「24億5千万円分を1億円で買い取った。」「昨年秋にみずほ銀行の反社向け融資が発覚して以降、金融機関から同機構への買い取り申請が殺到しているという。」

※参照
2014年10月30日 日本経済新聞
暴力団向け債権、買い取り急増  みずほ問題受け16倍に 預保機構

(評)
平成23年10月29日、預金保険法の一部を改正する法律が施行され、預金保険機構が特定回収困難債権を金融機関から買い取る制度が始まった。実際に債権を買い取るのは同機構から委託を受けた整理回収機構になる。
特定回収困難債権とは、金融機関が保有する貸付債権、手形債権等のうち、「当該貸付債権の債務者又は保証人が暴力団員であって当該貸付債権に係る契約が遵守されないおそれがあること、当該貸付債権に係る担保不動産につきその競売への参加を阻害する要因となる行為が行われることが見込まれることその他の金融機関が回収のために通常行うべき必要な措置をとることが困難となるおそれがある特段の事情があるもの」に限られる。
具体的には、債務者や保証人が暴力団、暴力団員、準構成員、フロント企業、共生者等の反社勢力であるか、債務者、保証人その他委託を受けた者等が、暴力的な要求行為、不当要求行為、脅迫・暴力行為、業務妨害行為等を行う場合がこれに該当する。
ただ、同機構が「反社勢力」と判断するのは、警察が組員や暴力団関係企業と認定することなどが条件となっているため、同記事によると「申請のうち実際に買い取るのは5割程度」だという。

具体的な手続の流れは次のようになる。
4月
金融機関が、預金保険機構に買取を申し込む。
5月
預金保険機構内において、弁護士、不動産鑑定士等で構成された買取審査委員会が買取の可否、買取価格を審議。
6月
運営委員会が、買取審査委員会の意見を踏まえて議決により買取を決定、預金保険機構が整理回収機構に買取を委託。
6月末から7月
整理回収機構が金融機関から当該債権を買い取る。
なお、債務者の意義審査制度がある。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2014年11月07日
法律事務所ホームワン