マタハラを巡り最高裁が初の判断

2014年10月31日
法律事務所ホームワン

平成26年10月23日、第一小法廷でマタハラを巡る、初の判断を示した。
本件は、広島中央保健生活協同組合に勤務する理学療法士Aが提訴した事案。Aは妊娠を理由に、負担の重い甲業務から負担の軽い乙業務への転換を申請。組合はAの副主任職を解き、Aも復職後は副主任に戻れるものと思い、渋々了承した。育児休業の終了後、Aは甲業務に戻ったが、自分より職歴が6年短いBがAと入れ替わり副主任になっていたため、Aは副主任の地位に戻ることができなかった。Aは組合に対し、上記の副主任を免じた措置は雇用機会均等法9条3項に違反する無効なものであるなどと主張。副主任手当の支払及び債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償を求めていた。
2審の広島高裁は組合の主張を認め、Aを敗訴させたため、Aは上告受理申立をしていた。
最高裁は「一般に降格は労働者に不利な影響をもたらす処遇であるところ、上記のような均等法1条及び2条の規定する同法の目的及び基本的理念やこれらに基づいて同法9条3項の規制が設けられた趣旨及び目的に照らせば、女性労働者につき妊娠中の軽易業務への転換を契機として降格させる事業主の措置は、原則として同項の禁止する取扱いに当たるものと解されるが、当該労働者が軽易業務への転換及び上記措置により受ける有利な影響並びに上記措置により受ける不利な影響の内容や程度、上記措置に係る事業主による説明の内容その他の経緯や当該労働者の意向等に照らして、当該労働者につき自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき、又は事業主において当該労働者につき降格の措置を執ることなく軽易業務への転換をさせることに円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって、その業務上の必要性の内容や程度及び上記の有利又は不利な影響の内容や程度に照らして、上記措置につき同項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するときは、同項の禁止する取扱いに当たらないものと解するのが相当である。」と一般論を述べ、次いで、1)組合は復職後も復帰させる積りがなかったのに、その旨をAに説明しておらず、Aが自由な意思に基づき同意したとは言えず、2)Aにつき降格の措置を執ることなく軽易業務への転換をさせることに業務上の必要性から支障があったか否かが明らかではなく、他方Aは非管理職へ降格され、管理職手当の支給を受けられなくなるなどの不利益を受けており、承諾なくして降格を認めるべき特段の事由も存在しないとして、Aの上告を認め、事件を広島高裁に差し戻した。

(評)
最高裁が「マタニティー・ハラスメント=マタハラ」を巡り初の判断を示した。マタハラとは判決妊娠や出産をした女性に嫌がらせをしたり、退職を迫ったりすることをという。全国の労働局にはマタハラについての相談が相次ぎ、13年度には2000件を超えた。
最高裁判決を要約すると「妊娠した女性が自由な意思に基づいて同意するか、円滑な業務運営や人員の適正配置と女性の不利益の程度等を勘案し、均等法9条3項の趣旨、目的に実質的に反しないと認められる特段の事由ある場合を除き」妊娠等を理由とする降格等の不利益変更は均等法違反になる。」というものだ。
本件では、確かにAは降格を承諾したが、復職後も副主任に戻れないことについて説明を受けておらず、その承諾は自由な意思に基づく承諾とは言えず、かつ、軽易な業務に就かせるだけでは足りず副主任職を解かなければならないような業務上の必要があったか疑問である一方で、労働者の不利益は、降格し、手当もなくなるという重大なものであって、上記特段の事由は認められないとしたのである。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹