企業法務コラム

政府、厚生年金未加入企業を特定 強制加入迫る方針

政府は厚生年金に入っていない中小零細企業など約80万社(事業所)を来年度から特定し加入させる方針。
税金は払っているが、年金保険料を払っていない事業所が約80万あり、こうした企業を特定するため、所得税を源泉徴収している事業所に関する国税庁のデータを使う。
日本年金機構は来年度にも、加入逃れが疑われる全事業所に文書や電話で厚生年金への加入を求める。応じなければ訪問指導などを実施。最終的には立ち入り検査で事業の実態や従業員数などを把握し、強制的に年金への加入手続きをとる。

※参照
2014年7月4日 日本経済新聞 朝刊
「厚生年金、加入逃れ阻止 政府、納税情報で特定 中小など80万社指導へ」

(評)
厚生年金に加入していない企業の大半は中小零細企業だろう。従業員の給料を払うのが精いっぱいで、とても年金の使用者負担にまでお金が回らない、といった企業が未加入企業の大部分を占めていると思われる。
国民年金の保険料納付率は60%強と低水準。納付率の高い厚生年金の加入企業を増やすことによって、納付率を少しでも上げることが当局の狙いだろう。
国土交通省は平成26年3月28日開催の建設産業活性化会議で、14年8月から、工事規模3000万円以上の国直轄工事の入札で、社会保険に加入していない建設業者を排除すると発表したのもこれと同じ流れだ。この場合、元請けとなるゼネコンが一次下請け業者と契約する場合、社会保険の未加入業者と契約することも禁じる。
人件費も緩やかではあるが上昇傾向にある中、保険料負担も求められるとなると、中小零細企業も労働生産性の向上が求められる。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2014年07月08日
法律事務所ホームワン