企業法務コラム

国交省、社会保険加入を工事入札の条件に

国土交通省は28日開催の建設産業活性化会議で、14年8月から、工事規模3000万円以上の国直轄工事の入札で、社会保険に加入していない建設業者を排除すると発表した。元請けとなるゼネコンが一次下請け業者と契約する場合、社会保険の未加入業者と契約することも禁じる。

※参照
2014年3月29日 日本経済新聞 朝刊
「社会保険加入、工事入札の条件に 国交省」

(評)
建設労働者の不足が大きな問題となっている。特に型枠工、鉄筋工等の専門職の不足が目立つ。公共工事の激減、地価低迷による不動産取引の低調、慢性デフレによる投資の減少があって、建設市場は縮小が続いていた、このため、建設下請となる中小企業では新規雇用を控えるようになった。また、建設業界の不況と慢性デフレで、建設労働者の年収も激減。年収200万円ほどとなり、就職する側からも敬遠されてきた。このため、単に職人不足というだけでなく、職人の高齢化が進み、技術の継承さえままならない事態になっている。
最近、専門工の賃金が高騰しているが、ようやく人並の賃金が貰えるようになったに過ぎず、きつい仕事の割に低賃金という現状は変わっていない。建設産業活性化会議はこうした現状を変えようということで設置された。これまで、国の対策と言えば、建設業の魅力を伝えるパンフレットを作ったりという、レベルの低い、アリバイ作り程度のものしかなかった。
最近外国人労働者を導入しようという動きもあるが、もっと足元を見つめ直すことが必要だ。こうした中で、今回の決定は、評価できる。
12年7月4日「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」が発表され、17年度には、企業単位では加入義務のある建設業許可業者の加入率100%を実現する目標を立てている。同ガイドラインでは、遅くとも17年度以降、社会保険未加入の建設企業は、下請企業として選定しないとの取扱いとすべきとされたが、今回の決定はその延長線上にある。
今後、地方自治体でも、同じ方向の動きが出てくるだろう。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2014年04月04日
法律事務所ホームワン