企業法務コラム

経営者無保証貸付 1ヶ月で393件

「経営者保証に関するガイドライン」が2月から運用開始されており、日本政策金融公庫と商工中金が、同ガイドラインにしたがって無保証で貸し付けたものが、1ヶ月で393件、融資額354億円に達した。うち既存の経営者保証を解除する措置は34件(同64億円)だった。
「日本再興戦略」で掲げる10%台の開・廃業率実現には、保証債務の存在が創業や起業意欲を阻害する大きな要因になっているとし、この点の改善を求めている。

※参照
2014年3月17日 J-Net21 中小企業ビジネス支援サイト
経営者保証なし融資、「1カ月で393件実施」-経産相

(評)
全国銀行協会等が中心になって作られた「経営者保証に関するガイドライン」 の適用が2月1日から開始されている。以下の条件を満たしていれば、保証を免除することも考えるべきとしている。
1)法人と経営者個人の資産・経理が明確に分離されている。
2) 法人と経営者の間の資金のやりとりが、社会通念上適切な範囲を超えない。
3) 法人のみの資産・収益力で借入返済が可能と判断し得る。
4) 法人から適時適切に財務情報等が提供されている。
5) 経営者等から十分な物的担保の提供がある。
http://www.jcci.or.jp/chusho/kinyu/131205guideline.pdf

日本政策金融公庫は同ガイドラインの趣旨を踏まえ、以下の要件を満たす場合は、経営者保証を免除する制度を新設した。
1)公庫との取引が3年以上あり、直近3年間、返済の延滞がないこと
2)法人と経営者個人の資産・経理の 明確な分離等について認定支援機関等の外部専門家による確認を受けること
3)法人のみの資産・収益力で借入 金の返済が可能と判断できること
4)中小会計を適用していること
5)財務制限条項を含む特約を締結すること
http://www.kigyouhoumu.info/topics/2014/02/698

しかし、市中銀行で、ガイドラインがどの程度広まっているかは疑問だ。広まらない理由は2つ、1つは取りっぱぐれは極力なくしたい、経営者に返済責任について自覚を持ってほしいという回収面から、もう1つは、担保がない部分、管理をきちんとしなければならず、管理コストが膨らんでしまうからだ。金融検査マニュアルも同ガイドラインの策定を踏まえ「主債務者たる中小企業等から資金調達の要請を受けた場合には、当該企業の経営状況等を分析した上で、法人個人の一体性の解消等が図られているか、あるいは、解消を図ろうとしているかを検証するとともに、検証の結果、一体性の解消が図られている等と認められる場合は、経営者保証を求めない可能性等を債務者の意向も踏まえた上で検討する態勢を整備しているか。」との規定を設けたが、実務では個人保証を外して融資する例はあまりないという。その代わり、個人保証を取る相手に、個人保証をとる理由をこんこんと説明しなければならないことになり、銀行も、これを聞かされる企業側も余計な負担をこうむっているだけというのが現実のようだ。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2014年03月18日
法律事務所ホームワン