企業法務コラム

マンション売却決議制度できる

標記法律案について、マンションの建替えの円滑化等に関する法律の一部を改正する法律案が、2月28日付で閣議決定された。概要は以下の通り。

1) 耐震性不足の認定を受けたマンションについては、区分所有者等の4/5以上の賛成で、マンション及びその敷地の売却を行う旨を決議できることとする。
2) 決議に係るマンションを買い受けようとする者は、決議前に、当該マンションに係る買受計画を作成し、都道府県知事等の認定を受けることができることとし、決議で定める買受人は、当該認定を受けた者でなければならないこととする。
3) 決議合意者は、決議合意者等の3/4以上の同意で、都道府県知事等の認可を受けてマンション及びその敷地の売却を行う組合を設立できることとする。
4) 組合は、決議に反対した区分所有者に対し、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すことを請求できることとする。
5) 都道府県知事等の認可を受けた分配金取得計画で定める権利消滅期日に、マンション及びその敷地利用権は組合に帰属し、当該マンション及びその敷地利用権に係る借家権及び担保権は消滅することとする。
6) 組合は、権利消滅期日までに、決議に合意した区分所有者に分配金を支払うとともに、借家権者に対して補償金を支払うこととする。
7) 耐震性不足の認定を受けたマンションの建替えにより新たに建築されるマンションで、一定の敷地面積を有し、市街地環境の整備・改善に資するものについて、特定行政庁の許可により容積率制限を緩和することとする。
http://www.mlit.go.jp/common/001028468.pdf

(評)
我が国のマンションのストック総数は約590万戸。そのうち約106万戸が旧耐震基準により建てられており、耐震性の不足が心配されている。しかし、マンションの建替えはこれまで183件、約14,000戸の実施にとどまっており、耐震化の促進が強く求められている。
改正前は、5分の4以上の賛成があれば、建替決議はできても、マンションを1棟ごと売却することはできなかった。今回の改正で、5分の4以上の賛成があれば、マンションを一棟ごと売却できるようになった。
なぜか。マンションの容積率、建ぺい率に余裕があれば、建替えの合意は得られやすい。例えば60㎡10室のマンションを取壊し、60㎡15室のマンションを作ることができれば、5室を売却に回わして建築費を賄えるからである。要するに余った容積率、建ぺい率を利用してタダで建て替えができるのだ。しかし、大概のマンションは容積率、建ぺい率をギリギリ使って建てられている。そのため、いざ建て替えることになれば、住人みんなで建築資金を用意しなければならないことになる。その場合、一人当たり1000~2000万円前後の資金が必要になる。新たに銀行でローンを組むことができれば、資金確保できるかもしれないが、建替えの対象となる老朽化マンションは、住人も高齢化しているので、銀行融資を得るのは容易ではない。
今回の改正のもう一つのポイントは耐震性不足を指摘されたマンションを建て替えることで、市街環境の整備・改善に資するものは容積率をアップすることができるとされたことである。これも増えた容積率を利用して、建設費の全部または一部を賄おうとするものである。
しかし、マンションを一棟ごと、デベロッパーに売却し、その代わり現金を貰えば、その現金で他のマンションを買うことはできる。以上が今回の改正の理由である。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2014年03月04日
法律事務所ホームワン