企業法務コラム

外国人実習制度 拡大への大きな動き

外国人実習制度 拡大への大きな動き
 
政府はこのほど、「建設分野における外国人材の活用に係る緊急措置を検討する閣僚会議」を開き、外国人技能実習制度を改正し、受け入れを拡大する事で一致した。
13年度内に具体的な方策を詰める。15年度初頭の受け入れを目指して、14年6月頃に必要な措置をまとめる予定だ。
当面は、東京五輪関連の需要を見込んだ人材を確保するための時限的な措置となる。
現在、技能実習生の実習期間は3年とされているが、これを5年程度に延長する事や、一度日本で実習を受けた外国人の再入国、受入人数枠の拡大を今後の検討での論点としている。

※参照
住宅新報2014年2月5日号

(評)
建設労働者は、型枠工、鉄筋工といった技能労働者の不足が目立ち、労賃が1.5倍ほどに急騰。これが原因となって建築単価も押し上げられている。国土強靱化基本法という法律までできた国土強靭化も、東京五輪も、建設労働者不足という隘路が原因となって足止めを食う可能性さえある。このため、外国人労働者を建設現場に投入するための施策が議論されるようになった。また、「外国人受け入れ環境の整備」は、安倍政権が1月にまとめた成長戦略の検討方針の1つでもある。
もっとも「移民」というと、自民党内を中心に、国内に拒絶反応が強いため「外国人技能実習制度」という、搦め手から入ろうということだろうか。しかし、外国人実習制度は、途上国に日本の技術を移転しようという、国際貢献の一環としての制度である。今までも、技術移転は看板で、実際は単純労働の確保ではないかと批判されてきたのに、建設労働者が不足したから外国人実習制度を利用しようということになると、露骨過ぎて、目的外利用との批判も生じかねない(東京五輪までの時限措置となれば露骨さはさらに増す)。そのため、海外インフラ受注に向けて、将来海外に送りこむ技術者養成の一環といった体裁をとるのかもしれない。
ただ、現在建設業界だけで、4~5万人の外国人労働者が必要とされているほか、介護業界からも外国人労働者の導入の声が上がっている。こうした声に応えようとすれば、外国人実習制度という既定の枠内では納まりきらない可能性がある。率直に「単純労働者の受け入れ」という、根本の議論をしていく必要がある

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2014年02月13日
法律事務所ホームワン