国家戦略特区法が成立

2013年12月10日
法律事務所ホームワン

国家戦略特区法が、12月7日参議院本会議で賛成多数で可決された。
同法は、次のような仕組みで、特区毎に、規制を緩和し、特定事業を行い、産業の国際競争力の強化、外資の導入(誘致)を行おうというもの。

1.
内閣総理大臣は、国家戦略特別区域諮問会議の意見を聴いて、国家戦略特別区域基本方針の案を作成し、閣議の決定を得る。
同諮問会議は、内閣総理大臣を議長とし、内閣官房長官、国家戦略特区担当大臣、内閣総理大臣が指定する国務大臣、民間有識者が議員を務める。
2.
内閣総理大臣は、前記諮問会議及び関係地方公共団体の意見を聴き、前記基本方針に即して、特区ごとに区域方針を定めるものとする。
3.
各特区に置かれる国家戦略特別区域会議(通称「統合推進本部」)が該当特区の更なる具体的計画(区域計画)を作成する。
 統合推進本部は国家戦略特区担当大臣、関係地方公共団体の長、内閣総理大臣が選定した民間事業者で構成される。
4.
内閣総理大臣は、前記諮問会議の意見を聞いて、同区域計画を認定する。認定された計画は認定区域計画と呼ばれる。
5.
閣議の結果国家戦略特別区域の指定(政令)され、区域方針が内閣総理大臣により決定される。

(評)
同法が具体的に法改正をし、ないしは、直接行政処分を行い、規制緩和をするのは以下のもの。

12条 旅館業法
13条 医療法
14条 建築基準法
15条 国家戦略住宅整備事業(容積率緩和)
16条 道路法
17条 農地法
18条 農地等効率的利用促進事業
19条 土地区画整理法
20条 都市計画法
21条 国家戦略開発事業
22条 国家戦略都市計画施設整備事業
23条 都市計画法
24条 都市再生特別措置法

このように、当初は「解雇特区」ではないかとの物議を呼んだ、雇用特区は姿を消し、もっぱら、旅行、道路、建築、都市開発関係の特例措置が中心となっている。すなわち、外国観光客のキャパシティを高めるための旅館業法の改正、商業地域における土地利用の高度化を実現するために特区内での容積率の売買を可能としたり、都計審等の審議を経ることなく政府主導で特区内の容積率を緩和することもありといった点である。
政府の国家戦略特区WG、海外企業やベンチャー企業を特区に呼び込むため、短期契約を5年を超えて更新しても無期転換しないことを使用者と従業員が事前に約束できる、解雇の要件や手続きを契約書面で明確化するという特例措置を提案した。しかし、厚生労働省が反対し、労働基準法、労働契約法に関しての特例は認められなかった。雇用に関する規制は全国で統一されている必要があるし、そもそも労働法制は、ILO条約により労働者側の意見を聞く必要があるとされているからである。
結局、国家戦略特別区域において、国家戦略特別区域内において新たに事業所を設置して、新たに労働者を雇おうという外国企業等に、情報の提供、相談、助言その他の援助を行うというかなり後退したものになった(同法36条)。
ただ、附則第2条において、一定の期間内に終了する事業の場合、高度の専門的な知識等を有し、高収入を約束された労働者であれば、有期雇用を無期雇用に転換する(契約社員を正社員に転換する)労働契約法の規定をより緩和することを、労働政策審議会の意見を聴いたうえで、緩和することとしている。政府は、このための特定措置を講ずるために必要な法律案を平成26年に開会される通常国会に提出することを目指すとしている。新聞報道によれば、政府は、無期転換までの期間を全国一律で5年より延ばすことを検討しているという。
なお、同法案を審議した参院内閣委員会で、12月5日、与党は審理の遅延を理由に民主党の水岡俊一をから自民党の山東昭子に交代させ、翌日には賛成多数で法案を可決した。議案の内容はともあれ、このような強引な国会運営が通常国会での労働契約法改正に影響を及ぼすことがあるかもしれない。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹