退去後のハウスクリーニング費用を一律元賃借人に請求するとの当否

2013年11月15日
法律事務所ホームワン

適格消費者団体である消費者支援機構関西が、不動産賃貸業等を営む株式会社明来に対し、同社の賃貸借契約が消費者契約法9条ないし10条違反に該当するとして、第12条第3項に基き契約の差止等を求めた訴訟につき、大阪高裁は、平成25 年10 月17日は、関西の主張を一部認める判決をした。
関西が消費者契約法違反だとした主張しているのは次の条項

1 破産、民事再生、保全処分、強制執行、競売の申立あった場合解除しうる。
2 後見開始、保佐開始した場合は解除できる。
3 契約終了後の明渡しが遅れた場合は、損害として家賃2か月分に相当する賠償額を支払う。
4 滞納家賃を督促する手数料を賃借人が1回あたり3,150 円支払う。
5 自然損耗を超える汚損の有無にかかわらず賃借物件の補修費用(面積に応じた一定額)を賃借人に負担させる

これに対する高裁の判断は以下の通りであった

1 消費者契約法に違反する
理由
ア)これらの事由が発生したからといって、直ちに賃貸借契約当事者間の信頼関係が破壊されていると評価すべきではない。
イ)賃貸人は、家賃等を2か月以上滞納すれば、催告の上、契約を解除できるのであるから、それで十分。

2 同法に違反する
理由
成年後見人や保佐人が付され、同人らによって財産管理がされ、近隣紛争の解決が期待できるから、賃貸借契約の信頼関係破壊の徴表には当たらない

3 同法に違反しない
理由
ア)賃借人の明渡しのためには、訴訟、強制執行当、相当の費用や時間もかかるし、その費用の確実に回収できる訳ではなく、回収に至るまでの時間を金額的に評価すれば、賃貸人に通常生ずべき損害は賃料相当額にとどまらない。
イ)賃貸人の損害の填補、賃借人の明渡義務の履行を促すという観点からして、賃料以上の一定の額を損害賠償額の予定として定めることは、合理性があり、賃料の2倍という額は、高額過ぎるとまではいえない。

4 同法に違反しない
理由
督促には、内容証明郵便を送ったり、従業員が訪問し直接督促する等、相応の費用を要することが少なくない。それを超える費用が発生してた場合、逆に賃借人は定められた金額を支払えば足りるという点では賃借人に有利な面もある

5 同法に違反しない
理由
ア)借主が通常の清掃を実施している場合の専門業者によるハウスクリーニングクリーンアップ代が借主の費用負担と明示しているから、賃借人にとって、クリーンアップ代の支払によって負担する部分について明確に認識することができる。
イ)賃料から上記クリーンアップ代の回収をしないことを前提に賃料額が合意されているとみるのが相当である。

(評)
消費者契約法10条は、消費者に不利益な条項を無効とするものであるが、前段で「民法 、商法等の任意規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であること」、後段で「信義則違反ないし権利の濫用として消費者の利益を一方的に害すること」が要件となっている。高裁判決は上記の3ないし5は前段の要件は満たしているが、後段の要件は満たしていないとした。関西はおそらく上告するだろうから、まだ決着はつきそうにない。

※参照
平成24年12月5日 消費者庁ニュースリリース
消費者支援機構関西と株式会社明来の判決について

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹