企業法務コラム

みずほ銀 都の指定金融機関の地位を保てるか

同行は1964年から都の指定金融機関となっている。住民税の収納や公共工事費の支払い、地方債の経理処理など都の公金管理を約50年にわたり一手に取り扱ってきた。同行は9月30日、融資問題に関する報告書を都側に提出したが、その後に当時の経営トップも問題を把握していたなど、報告が事実と異なっていたことが判明。都は10月10日、みずほ銀幹部を都庁に呼び、事実関係の調査と信頼回復を求める申し入れ書を手渡した。

※参照
2013年10月28日 日本経済新聞
「みずほ銀暴力団融資、「指定金融機関」継続で自治体困惑」

(評)
みずほ銀行のこの問題はいろいろなところに波紋を広げつつある。特に、頭取が辞任もせず、大甘処分を行ったことで、火に油を注いてしまっている。
全国銀行協会では、銀行取引約定書に盛り込むべき暴力団排除条項(暴排条項)の参考例を加盟銀行に通知。これを受けて、各銀行も銀行取引約定書などに暴力団排除条項を盛り込み、暴力団排除を進めてきた。借り手も、暴力団との関係を疑われれば融資を受けられず、後日関係が発覚したら一括返済を求められかねない。みずほ銀行も銀行取引約款に暴排条項を入れている。借り手からすれば、「自分たちには暴排をうるさく言っておきながら、自分は何なんだ」という気になる。
しかし、一般民間企業以上に暴排にうるさいのが各地方自治体だ。東京都も「東京都契約関係暴力団等対策措置要綱」で、都が発注する全ての契約において暴排条項を設けている。排除の対象となる一つが「暴力団等資金提供者」であり、「個人又は法人の役員等若しくは使用人が、暴力団等であることを知りながら暴力団等に対して資金等を供給し、又は便宜を供与するなど直接的あるいは積極的に暴力団等の維持、運営に協力し、若しくは関与していると認められる者」がこれにあたる。
みずほ銀行がこれにあたると判断された場合は、都の指定金融機関からは当然外されることになる。そうなれば、この動きが、各地の自治体に連鎖反応的につながっていくだろう。さらに民間企業でも取引停止に動く企業も増えてくるかもしれない。
苦労するのは現場の行員。「ベンチがアホやから野球がでけへん」との江本孟のセリフをふと思い出した。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2013年10月31日
法律事務所ホームワン