尖閣前と尖閣後でのビジネス環境の変化

2013年08月28日
法律事務所ホームワン

日本経済新聞社がまとめた「中国進出日本企業アンケート」が8月23日付で発表された。昨年9月以来、沖縄県尖閣諸島をめぐって混乱が続いているが、尖閣前と尖閣後でビジネス環境が大きく変わっていることが読み取れる。
中国事業の売上高については、減少したままで回復の兆しなし」が7%。「回復に向かうも、尖閣前の水準に戻らず」が24.4%、「尖閣前の水準まで回復」が41.9%、尖閣前の水準を上回っている」が18.6%、その他が8.1%となっている。
同紙によれば、賃金の前年比上昇率を、12年調査と比べると、「5~9%上昇」が25%から40%に増加し、「10~15%上昇」が51%から40%に減少し、賃金上昇が大幅に減速した。ちなみに11年調査では二桁上昇が8割近くあった。
これも尖閣の影響があると思うが、現地化のために「中国人社員の幹部登用を認める」が77%。「会長に登用した」が8%、「社長に登用した」は29%にもなる。
中国政府は雇用者に占める派遣社員の比率を10%未満にすることを企業に義務付ける方針と伝えられているが、これに対する対策としては「正社員教育を強化し、効率化を進める」との前向きの回答をした企業が23%で最も多かった。
中国の微網(ミニブログ)利用者の増加に対しては、「微網を通じて商品情報などを発信している」が19%、「顧客の動向や自社のイメージを知るためにソーシャルメディアの書き込みなどをチェックする」が20%だった。

※参照
2013年8月23日 日本経済新聞 朝刊
「中国事業の売上高「尖閣前に戻らず」3割 進出企業調査 戦略拠点、8割なお重視」

(評)
昨年9月以来、沖縄県尖閣諸島をめぐって両国間の関係が悪化し、中国でのビジネス環境も大きく変わった。習近平は「Chinese Dream」を盛んに言っており、国内の不満を愛国心でかわそうとしている。
政府間で対立が激化しても、経済交流は活発という「政冷経熱」が、従来の形であった。しかし、最近は中国人の反日感情が悪化し、それが商品購入にも影響が出てきている。
売上の変化を見ると、商品力が大きく影響しているのではないかと思われる。やはり、A国製と日本製とで、商品力が同等であれば、反日的要素がからんで、A国製が選ばれる。しかし日本製商品の魅力が上回れば、買ってもらえるということだろう。だからコモディティー化した商品は買ってもらえなくなってくるかもしれない。そうなった場合、その企業にとって中国市場は鶏肋(けいろく)となりかねない(三国志の逸話です)。
賃金上昇であるが、日経は、中国経済の不振と、日本企業の収益悪化を原因に挙げている。政府は所得倍増を言うが、その一方で経済成長率を7.5%としているのだから、5~9%の上昇が妥当な水準であろう。
尖閣以降は労働管理も難しさを増している。労働者の争議を、地方政府が糸を引いているとは言わないものの、一心同体と言っていい関係にある。その意味でも、地方政府とのコネクションを良くしておくためにも、労働者の人心把握のためにも、トップを中国人にするというのは一つの選択だろう。ただ、中国人はナンバー1の指示は絶対だが、ナンバー2の指示はそうではなく、ナンバー2の指示に不満があると、ナンバー1に直談判に及ぶと聞く。こういった国民性も考えて、トップ人事も考える必要があるだろう。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹