企業法務コラム

吊り天井にご注意

7月14日に静岡県立富士水泳場において、屋内プールの吊り天井の天井板等の大規模な脱落が生じに、同月27日には横須賀市立北体育館屋内プールで吊り天井の立ち上がり部分の天井板の一部の脱落している。この事態を踏まえ、国交省は8月20日付で、都道府県、関係団体、関係省庁あてに注意喚起の通知を出した。

※参考
国土交通省ホームページ
屋内プール等の大規模空間を持つ建築物の吊り天井の脱落対策について(技術的助言)

(評)
 吊り天井と言っても、譜代大名の本多正純が、宇都宮城に吊り天井の細工をし、将軍・徳川秀忠の暗殺を謀ったとかいった、歴史もののはなしではない。
 つり天井は、天井裏から金属の棒で石こうボードをつり下げる構造。東日本大震災では全国2千カ所の施設で落下。東京都千代田区の九段会館の天井落下事故では2人が死亡した。
 建築基準法施行令39条1項では、天井を含む内装材については、地震。台風等による振動で脱落しないよう求められており、建築物の所有者、管理者等者は、建築基準法8条1項により、所有、管理する建物を常時適法な状態に維持するように努めるよう、12条1項に基づき定期調査報告を実施するよう求められている。
 しかし国交省の調査によれば「国の技術指針に適合しない「つり天井」を備えた大規模施設が全国に4709棟あり、うち70%の3303棟は落下対策を取っていない」(2012/12/26日経)。
 文部科学省は7月、学校施設のつり天井や照明器具などの落下防止対策をまとめた。地震の揺れで落下の恐れのあるつり天井は撤去を求める内容。全国の公立小中高校には防音や断熱のため、つり天井式の施設は約8700棟ある。文科省は「大半が撤去の対象となる」としている(2013/7/5 日本経済新聞朝刊)。
 8月21日開催の地下街安心避難対策検討委員会(国交省)では、全国の地下街の天井等設備の安全点検方法等について、議論が行われた。
 天井の脱落防止対策については、平成26年4月1日施行の改正建築基準法施行令が、新たな天井の基準を定めているので、注意されたい。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2013年08月23日
法律事務所ホームワン