企業法務コラム

日本版スチュワードシップ・コード制定への動き

8月6日、金融庁主催の「日本版スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」第1回が開かれた(座長は神作裕之東京大学大学院教授)。

※参照
金融庁ホームページ
「日本版スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」(第1回)の開催について

(評)
スチュワードシップ・コードとは英国企業財務報告評議会が、英国企業株式を保有する機関投資家向けに策定した株主行動に関するガイドラインのこと。
スチュワードシップ(stewardship)は財産管理倫理(英語版wikiでは、Stewardshipis an ethic that embodies the responsible planning and management of resourcesとある)、コードは規範、併せて財産管理倫理規範と訳すべきだろうか。
スチュワードシップコードは、機関投資家が順守すべき次の7つの原則から構成され、それぞれについて詳しいガイダンス(解釈指針)が作成されている。

(1)受託者責任をどのように果たすべきかについて方針を公表するべき
(2)受託に関する利益相反を管理するための強固な方針を設定し、これを公表すべき
(3)投資先企業をモニター(監視)すべき
(4)受託者としての活動を強化するタイミングと方法について明確なガイドラインを設けるべき
(5)必要に応じて他の他投資家と協働すべき
(6)議決権行使と行使結果の公表について明確な方針を持つべき
(7)受託者としての行動及び議決権行使活動について、受託者に対して定期的に報告すべき

米国でもエリサ法という、企業年金の加入者の受給権の保護を目的とした、年金基金及び受託機関の受託者責任を明記した法がある。
現状では、企業と株主の接点は年1回の株主総会くらいしかない。東証上場企業も次のような状況だ(1,3は東証上場企業コーポレート・ガバナンス白書2013、2は株主総会白書2009年版)。

1投資家向けの定期的説明会を開催しているか
  海外投資家向けに開催 18.9%
  アナリスト・機関投資家向けに開催 79.5%
  個人投資家向けに開催 27.6%
2総会前に株主と個別に話し合う機会の有無
  機会はなかった 79.4%
  電話によった 13.6%
  訪問した 4.8%
  訪問を受けた 5.2%
3株主総会の活性化
  招集通知の英訳版作成 20.4%
  議決権行使電子プラットフォームへの参加 22.6%
  電磁的方法による議決権行使 33.0%
  集中日を回避した株主総会の設定(3月決算会社) 48.9%
  招集通知の早期発送 55.2%

金融庁開催の検討会であるが、この日本版スチュワードシップ・コードには次のようなねらいがあるように思われる。
社外取締役の普及も不十分。というか、オリンパスでは社外取締役が3人いたのに、全く役に立たなかった。最早、日本の上場企業に自浄作用を期待できないから、外部からの監視を取り入れるしかない。
機関投資家に頑張って貰って、透明性が高まれば、海外投資家の株式購入も増える。
そうして海外の年金基金が安定株主になってくれればいいな、といったあたりか。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2013年08月14日
法律事務所ホームワン