企業法務コラム

全柔連上村会長が辞任表明(下) 助成金の不正受給問題

公益認定員会が全柔連に対して出した勧告書は安倍晋三首相名で出されているが、特に問題になっているのが助成金の不正受給問題。不正受給した助成金6055万円を日本スポーツ振興センターに速やかに返還し、全柔連に生じた損害を責任者に賠償請求を検討することも求めていた。

この不正受給問題とは、全柔連が、日本スポーツ振興センターから支給された助成金を、指導実態のない人物などにも支給し、最終報告書では2007年~2012年に受給した延べ63人のうち、27人分3620万円が不正受給だったとされているもの。

さらに問題なのは、組織ぐるみであること、無資格者に支給されたお金が全柔連に還元され、それがプールされ、簿外で支出されていたということだ。その簿外の支出には海外指導者の接待飲食費も含まれている(その接待先にはビゼール会長も含まれているんでしょうか)。

この助成金は、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(通称適正化法)」でいう「間接補助金等」に該当するのではないかと思うのだが、そうなると「偽りその他不正の手段により…間接補助金等の交付…を受けた者は、5年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。(29条1項)」「第11条の規定に違反して補助金等の他の用途への使用又は間接補助金等の他の用途への使用をした者は、3年以下の懲役若しくは50万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。(30条)」「法人の代表者…が、その法人…の業務に関し、前3条の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、当該法人に対し各本条の罰金刑を科する。(32条)」

また、適正化法とは別に、背任罪の成立の可能性もある(適正化法違反と背任罪は観念的競合)。

そして、この事実は全柔連が「公益目的事業を行うことを主たる目的とするものであること」の要件を満たさないのではないかとの疑問を持たせる。ガイドラインによれば、「助成の選考が公正に行われることになっているか。」「 専門家など選考に適切な者が関与しているか。」公益目的事業のチェックポイントとされており、これにひっかかるのではないかと思われるからだ(本件ではセンターが補助金等の交付主体であり、全柔連が補助事業者であるため、ガイドラインが直接適用なるものではないが、その補助金は指導者に支給されるものとなっており、交付主体が支給対象者を選考、支給する業務を実質代行しているものとも言え、同条の趣旨からすれば、認定要件に反しているように思われる)。また「公益目的事業を行うのに必要な経理的基礎及び技術的能力を有するものであること」のうち、「経理的基礎(経理処理、財産管理の適正性)」があるかについても重大な疑念がある。ガイドラインでは「経理処理、財産管理の適正性」とは、「法人の財産の管理、運用について理事、監事が適切に関与する体制がとられていること」「開示情報や行政庁への提出資料の基礎となる十分な会計帳簿を備え付けていること」「法人の支出に使途不明金がないこと、会計帳簿に虚偽の記載がないことその他の不適正な経理を行わないこと」を意味するとされ、執行部は上記第3の点において、理事は上記第1の点において、明らかに適性を欠いていると思われるからだ。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2013年08月01日
法律事務所ホームワン