企業法務コラム

動産担保 評価費用安く

電通子会社の電通国際情報サービス社はNPO法人日本動産鑑定と組み、年内にも金融機関が出荷前の家畜や、企業の商品在庫といった動産担保を安価に評価できるシステムを開発する。一連の手続をインターネット上で済ませられ、費用も従来の1件数十万円から1件数万円に下がるという。

※参考
2013年5月20日 日本経済新聞
動産担保の評価を安く 電通国際など新システム開発へ

(評)
古い記事になるが勘弁いただきたい。
金融検査マニュアルにおいては、自己査定上、「一般担保」とは、「優良担保以外の担保で客観的な処分可能性があるもの」をいう。
マニュアルでは「動産担保」が「一般担保」として取り扱われるためには、次の要件を満たすべきとされている。

・対抗要件が適切に具備されていること
・数量及び品質等が継続的にモニタリングされていること
・当該動産につき適切な換価手段が確保されていること
・担保権実行時の当該動産の適切な確保のための手続きが確立していること
・客観性・合理性のある評価方法による評価が可能であり、実際にもかかる評価を取得していること
を含め、動産の性質に応じ、適切な管理及び評価の客観性・合理性が確保され、換価が確実であると客観的・合理的に見込まれること。
仮に、「一般担保」として認められれば、債務者区分が破綻懸念先以下の場合においては、その分だけ貸倒引当金の計上や直接償却が不要になるという効果がある。
ただ、動産担保を認めてもらうためには、上記の要件を一つ一つクリアしていく必要がある。

1まず「対抗要件」だが、「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」に基づく動産譲渡登記が必要だ。
2「モニタリング」は以下を対象として行う。
・在庫品の保管場所
・品目別の仕入数量及び金額
・品目別の売上数量及び金額
・品目別の在庫数量及び金額
3以下の場合は、「適切な換価手段」が確保されているといっていい。
・転売先も予め決まっており、売買予約契約が締結されている
・当該在庫商品を扱う適切な市場が存在する
・当該在庫商品の中古品、金融流れ品等を取り扱う専門業者等がいる。
・「動産担保」に関係する団体や専門業者等との業務提携等により、信頼のおける売却ルートが存在する。
・金融機関自ら、売却ルートを確保している。

今回のサービスは、上記要件中「客観性・合理性のある評価方法による評価が可能であり、実際にもかかる評価を取得していること」の要件にかかわる。
なお、金融検査マニュアルにおいては、「動産・売掛金担保」の標準的な掛け目は、「動産担保」が評価額の70%以下、「売掛金担保」:評価額の80%以下となっている。
また、金融検査マニュアルにおいて、『ABL(動産・売掛金担保融資)により「貸出条件緩和債権」に該当しない場合』についても明確化された。マニュアルでは、ABLには担保資産の管理等を通じて、債務者の経営実態を金融機関が把握できる特質があることを踏まえ、中小企業が経営改善計画等を策定していない場合であっても、金融機関がABLにより、当該企業等の経営実態を把握した上で、経営改善に関する資料を作成している場合には、原則として、これを「実現可能性の高い抜本的な計画」とみなして、「貸出条件緩和債権」に該当しないこととして差し支えないものとしている。
金融機関にとって、本来、不良債権として引当を積まなければならないものが、正常債権として分類される意義は極めて大きく、今後の積極的な活用が期待される。
しかしながら、安易なABLは更なる不良債権を生み出す恐れもり、利用には十分な注意が必要だ。

なお、以下のサイトを参考にされたい
ABL(動産・売掛金担保融資)の積極的活用について(平成25年2月5日発表)
http://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130205-1.html
http://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130205-1/01.pdf
「金融検査マニュアル」の一部改定(案)(新旧対照表)
http://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130205-1/03.pdf
「金融検査マニュアルに関するよくあるご質問(FAQ)別編《ABL編》」の一部改定について
http://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130604-1.html
「金融検査マニュアルに関するよくあるご質問(FAQ)別編《ABL編》」(改定後)
http://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130604-1/01.pdf

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2013年06月07日
法律事務所ホームワン