企業法務コラム

中小企業における個人保証の在り方研究会 報告書まとまる

中小企業庁と金融庁は、平成25年1月から4月にかけて、「中小企業における個人保証等の在り方研究会」を計6回にわたり開催し、議論を行ってきたが、これの研究会報告書がとりまとめられ、公表された。
同報告書は、中小企業には、個人資産と会社資産の混交、ガバナンスの脆弱性、財務基盤の不足、経営の透明性の欠如があり、これを補完するものとして、経営者による
個人保証の有用性を肯定する。しかし他方、個人保証を徴求することが「創業、成長・発展早期の再生着手、事業承継」という各ライフステージにおける企業の取組意欲を阻害するおそれがあるとして、そのマイナス面を指摘する。そこで、中小企業が抱える前記欠点が解消しうる場合は個人保証を求めない方向での融資を指向する。ただ、公的な規制によることなく、行政の関与の下、金融機関ガイドランとしてくした保証のあり方を定めることが適当だとしている。

※参照
中小企業庁ホームページ
中小企業における個人保証等の在り方研究会報告書http://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/kojinhosho/2013/130424houkokusyo.pdf

(評)
報告書の結論に異議はない。金融庁が公的規制を図ると、かえって、踏み込み不足な内容のものになるおそれがある。金融機関のガイドラインとすることで、弾力的な対応も可能となろう。
なお同報告書は「個人保証の機能を代替する融資手法の活用例」として次の例を掲げている

○透明性の高いガバナンスの強化の観点からの報告義務や法人の事業資産と経営者個人の資産の分離の観点からの資産移転制限を停止条件(解除条件)とするような停止条件付保証契約(解除条件付保証契約)の活用○ABL、金利上乗せ、物的担保等の併用により信用リスクに見合った債権保全を図るといった融資手法の活用
また「事業承継時の対応例」として次のものを掲げている。

○実質的に債務超過の状態にある等、事業承継と一体的に事業再生を果たすことが適当な場合で、債権者にとっても一定の経済合理性が認められる場合には、事業承継時点の法人の資産と旧経営者(保証人)の資産により旧債務の一定の圧縮を図った上で、残存債務については、後継者に当然に保証債務を引き継がせるのではなく、その必要性や代替手法の活用について改めて検討するとともに、保証を求めざるを得ない場合においても適切な保証金額の設定に努める。

○一方、実質的に資産超過の状態にある等、事業承継時点の債務について、法人単体での回収が可能と判断される場合には、後継者に当然に保証債務を引き継がせるのではなく、その必要性や代替手法の活用について改めて検討するとともに、保証を求めざるを得ない場合においても適切な保証金額の設定に努める。

キーワード:個人保証 経営者保証 ABL 停止条件付保証契約 事業承継 事業再生 中小企業における個人保証等の在り方研究会

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2013年05月14日
法律事務所ホームワン