企業法務コラム

最高裁、地階店舗の看板等の撤去請求を権利の濫用と認める

最高裁判所第三小法廷本件は、4月9日、建物の地下1階部分を賃借して店舗を営む者が建物の所有者の承諾の下に1階部分の外壁等に設置していた看板、装飾及びショーケースにつき、建物の買受人による撤去請求が権利の濫用に当たるとする判決をした。
なお建物買受人は、地下1階部分の明渡請求、賃料相当損害金の支払請求とともに、本件看板等の撤去も求めており、原審は、明渡請求、損害金請求は認めなかったものの、本件看板等の撤去を認容していた。
これに対し、最高裁は、本件看板等は、本件建物とともに店舗の営業の用に供され、本件建物部分と社会通念上一体のものとして利用されてきたとし、本件看板等を撤去すれば、通行人に同店舗の存在を知らすこともできず、営業継続も著しく困難になること、他方買受人としては、売買契約書上に本件看板の記載があり、本件看板等の位置などからしても、本件看板等の設置が旧所有者の承諾を得たものであることは十分知り得たし、本件看板等が存在することで、買受人の本件建物の所有に支障が生じている訳でもないことから、買受人の本件看板等の撤去請求を、権利の濫用に当たるとした。

※参照
平成25年4月9日 最高裁判所第三小法廷判決
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130409111643.pdf

(評)
高裁の判決は理屈としては成り立つ。しかし、地階の店舗だけに、店だけあっても、地上に看板がなければ客を呼べない。店の明渡を認めなかったとしても、看板等が撤去されれば、賃借人としては営業自体成り立たないことになる。最高裁が、常識的な判断の下、高裁判決を破棄したといえ、その分高裁判決の非常識さが目立つ結果となった。

キーワード:借家契約 明渡請求 権利の濫用

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2013年04月12日
法律事務所ホームワン