企業法務コラム

中小企業再生支援協議会の活用増加 企業の財務体質が変わるチャンス

中小企業再生支援協議会を活用して中小企業の再生計画をとりまとめる事例が増えている。
大阪、京都、兵庫、滋賀、奈良、和歌山の2府4県の協議会では、平成24年4~6月期までは合計50件前後のペースだったが、7~9月期は115件、10~12月期は169件と急増している。
案件のルートも激変した。従来は中小企業自身からの相談が7割、金融機関の持込が3割だったのが、今では前者が3割、後者が7割となっている。

※参照
2013年2月13日 日本経済新聞
「中小再生計画、公的機関の活用増加 近畿、円滑化法終了控え」

(評)
記事は関西の協議会を取材したものだが、東京も同じような状況だ。
東京の場合、中小企業再生支援協議会は東京商工会議所内にある。おそらく他県も同様だろう。相談すると、相談員が会社の財務状況、負債状況等を聴取する。相談員は元銀行員が多い。相談員が再生可能と判断すると、次の段階に進む。そして、公認会計士等が1週間くらいかけて、会社に出張し、帳簿も見て、棚卸もして、財務状況を実査する。さらに中小企業診断士が会社の事業改善点を指摘、商品戦略等についても助言する。こうして、実現性があり、抜本的な経営改善計画(実抜計画)が策定され、銀行に新たな返済案が提示される。最終的に銀行との協議がまとまっても、企業側は計画の着実な実行を求められる。
こうした手続のため、6か月ほどはかかる。ただ、案件の激増に伴い、政府の強い要請で、簡易型もでき、簡易型だと2ヶ月間でリスケまで行く。相当タイトなスケジュールで試行錯誤中だ。
多くの企業が、協議会に案件を持ち込むと、取引先にも知れて、取引が打ち切られるのではないか、との不安を持つかもしれない。しかし、協議会での秘密保持は徹底している。協議会の他の相談員に話が漏れないように、対象企業にコードネームがつけられる。その会社のマークがカニなら「カニから連絡あったけど、会計士の●先生にはもう伝わってる?」なんて具合だ。
銀行から協議会に持ち込まれても、前向きに受け止めたほうが良い。企業の財務が筋肉質に生まれ変わる良いチャンスなのだから。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2013年02月14日
法律事務所ホームワン