企業法務コラム

東京高裁、貸しビデオ店訴訟で一審の労災認定取り消し。「6カ月ルール」厳格な運用

レンタルビデオショップに勤めていた男性(27)が過労死したとして、その両親が国を相手に労災認定棄却取消を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁の加藤新太郎裁判長は7日、一審の認定棄却取消判決を取り消し、遺族の請求を棄却した。遺族は上告する方針。
この男性は2000年9月くも膜下出血死亡したのは同年3月まで勤務していたビデオレンタル会社「クオーク」での過酷な勤務実態が原因だと訴えた。遺族は、退職後も疲労が回復せず脳出血障害を発症したと主張。昨年4月、一審の東京地裁は過労死を認め、国に対して労災認定を命じたが、国側は控訴していた。
判決は男性が「1カ月当たりおおむね80時間を超える時間外労働を行っていた」と過重な労働実態を認定したが、死亡したのが退職して6カ月以上経っているため、死亡との因果関係を否定した。

※参考
2012年11月8日 埼玉新聞
一審の労災認定取り消し 貸しビデオ店過労死訴訟で東京高裁判決
http://www.saitama-np.co.jp/news11/08/09.html

(評)
労災認定基準では「発症前6カ月以内」に過重業務に就労していないと、労災と認められない。高裁判決は、退職後の疲労については「客観的な状態を認めるに足りる証拠はない」と、くも膜下出血との因果関係を認めなかったが、弁護団は「過労死することを分かっていて医学的なデータをとる労働者などいない」と批判している。
国は6カ月ルールを厳格に運用しており、過重労働が過去6カ月以内にあれば疾病との因果関係を認めるが、6ヶ月+1日以上あればこれを認めない。ルールは極めて硬直的である。1日違いで天と地ほど結論が異なることが果たして妥当なのか。国は、敗訴すればこの6カ月ルールが否定されかねないので必死だったろう。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2012年11月09日
法律事務所ホームワン