企業法務コラム

過労死の企業名公開命じる 大阪地裁が初の判決

社員が過労死認定を受けた企業名を大阪労働局が開示しなかったのは不当として、「全国過労死を考える家族の会」代表個人が、国に対し不開示処分の取り消しを求めた行政訴訟の判決が11月10日、大阪地裁であった。田中健治裁判長は「個人や法人の利益を害する不開示情報には当たらない」として、労働局の決定を取り消した。
弁護団によると、過労死認定を受けた企業名の公表を命じる判決は全国で初めて。
情報公開法で不開示が認められている個人情報や法人の利害情報に、企業名が該当するかどうかが最大の争点だったが、判決理由で田中裁判長は「企業名だけで、過労死した労働者を特定することはできない」として、個人情報には当たらないと判断。
法人の利害情報か否かについて、国側は「企業名が明らかになれば取引先から不利な扱いを受け、人材確保の面でも影響が出る」と主張したが、田中裁判長は「企業の社会的評価が低下する抽象的な可能性はあるとしても、情報公開でただちに取引先の信用を失うなど、適正な企業活動に支障が生じるおそれは認められない」と退けた。労働局側は「労災を発生させたことを広く知られるのを恐れた企業側が、就労実態調査に協力的でなくなる」と主張したが田中裁判長は「一般的には想定できない」と退けた。判決などによると、寺西さんは平成21年3月、大阪労働局に過労死認定を受けた。
企業名の情報公開を請求したが、労働局は個人情報などを理由に不開示とし、労働局が公開した文書では企業名がすべて黒塗りにされた。

※参考
2011年11月10日 MSN産経ニュース
「企業名の開示命じる「不開示情報に当たらず」と大阪地裁」

2011年11月21日
法律事務所ホームワン