企業法務コラム

オリンパス訴訟:社員逆転勝訴「配置転換は人事権乱用」

上司による取引先社員の引き抜き行為を社内のコンプライアンス窓口に通報したところ、不当な配置転換を命じられたとして、精密機器メーカー「オリンパス」(東京都新宿区)社員の浜田正晴さん(50)が、同社側に配転先で働く義務のないことの確認などを求めた訴訟の控訴審で、東京高裁は31日、浜田さん側逆転勝訴の判決を言い渡した。鈴木健太裁判長は「配転は業務上の必要性と無関係で、人事権の乱用」と述べ、事実上の報復人事にあたると判断した。

1審・東京地裁(10年1月)は、浜田さんの通報について「異動による浜田さんの不利益はわずかで配転命令は報復目的ではない」と指摘。コンプライアンス窓口の担当者が上司に連絡したことも「浜田さんの承諾があり、社内規定に反しない」などとして、浜田さん側の主張を全面的に退けた。
これに対し、高裁は「浜田さんの承諾はなかった」として社内窓口の守秘義務違反を認定。さらに配転について「上司が内部通報に反感を抱いて行ったもの」と指摘し、通報者に不利益となる扱いを禁じた社内規定に反すると判断した。

さらに配転後の勤務状況について、「達成が難しい業務目標を設定し、(浜田さんが)できないことをもって極めて低い評価をした」と指摘。2度目の配転以降、新入社員同様の学習とテストを受けるだけの状態に置いた点も「50歳となった原告への嫌がらせにあたり、違法だ」と批判した。こうした点から、会社と上司に対し、配転による賞与減額分と慰謝料など220万円の支払いを命じた。
判決によると、浜田さんは07年6月、「上司の行為は信頼失墜を招く」として社内の窓口に通報したが、窓口担当者は浜田さんの氏名と通報内容を問題の上司を含む複数の同社幹部に連絡。その後、浜田さんは別部署に異動となり、1審判決を控えた昨年1月以降も2度の配転を命じられた。

今回の判決は、不当な目的のない「善意」の内部通報者に対する企業側の報復や制裁を戒めたと言える。

※参照
2011年8月31 毎日.jp
「オリンパス訴訟:社員逆転勝訴「配置転換は人事権乱用」」

2011年09月14日
法律事務所ホームワン