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文化放送『くにまる食堂』に中原俊明代表弁護士が出演/689回テーマ 「インターネットの検索結果やSNSの投稿の削除請求」編

弁護士の中原です。

今回は、「ネットでの誹謗中傷」について話しをしてきました。この問題については、以前から何度か取り上げてきましたが、
そのときに、侮辱罪の刑の重さが上がり、誹謗中傷の投稿者特定の手続きが簡単になる予定とお伝えしましたが、ようやく法律が改正され、7月7日から施行されています。変更点として、侮辱罪は、これまで拘留または科料と定められていましたが、ほかに1年以下の懲役もしくは禁錮、または30万以下の罰金が追加され、開示請求手続きも、今年10月1日施行予定となっています。

また、先月の24日には、ツイッターの削除請求について、最高裁判決が出ました。ある人物が、旅館の女性用浴場の脱衣所侵入容疑で逮捕され、その記事が報道機関のウェブサイトに掲載されました。それを見た人が、ツイッターに、記事の一部を転載し、さらに報道機関へのリンクを設定してツイートしたことにより、逮捕された人は、自らのプライバシーに属する事実をみだりに公表されない利益を侵害されている、として、運営会社に削除を求めたという裁判でした。

判決としては、最高裁は、いくつかの考慮要素を挙げたうえで、「事実を公表されない法的利益が、ツイートを一般の閲覧に供し続ける理由に優越する場合には、本件で問題となっているツイートの削除請求ができる」とし、本件では「事実を公表されない利益のほうが優越する」として、削除請求を認めました。ところが、5年前には、反対の判決が出ているのです。

児童買春の容疑で逮捕された事実が報道され、電子掲示板にたくさん書き込まれた結果、逮捕された人の名前と居住地をグーグルで検索すると、その人が児童買春の容疑で逮捕された事実などが書き込まれたウェブサイトのURLや表題、抜粋などが表示されてしまうことから、検索結果の削除を求めていた、という裁判でした。その裁判では、最高裁は同じように、いくつかの考慮要素を挙げた上で、「事実を公表されない法的利益が、検索結果として提供する理由に比して、優越することが明らかな場合には、検索結果からの削除を求めることができる」としたうえで、「本件ではその利益が優越することが明らかとは言えない」と判断して、削除を認めなかったのです。

先日の判決では「優越する場合」となっていましたが、こちらは「優越することが明らかな場合」となっており、ハードルが高くなっています。なんでそのような違いが出たのか、具体的理由はわかりませんが、5年前、平成29年の判決は「グーグルといった検索事業者による検索結果の提供は、インターネット上の情報流通の基盤として大きな役割を   果たしている」とし、そこが重視された可能性があります。

今回の判決でも、ツイッターのサービス内容や利用実態を考慮しても、グーグルのときと同じには出来ない、と言っています。ちなみに、この2つの裁判は逮捕歴に関するものでしたが、ほかの事実についてどんな判断が出るかはまだ分かりませんし、ツイッター以外のSNSだとどうなるかも不明です。

ネットは便利ですが、権利が侵害されやすい面もあります。もし、ネット上で被害を受けている、などがあれば、弁護士にご相談されることもご検討いただいたほうが良いかと思います。

◇日時
 毎週火曜 11:31~
◇放送局
 文化放送
◇番組名
 『くにまる食堂』
◇コーナー名
 「日替わりランチ ホームワン法律相談室」
◇689回テーマ
「インターネットの検索結果やSNSの投稿の削除請求」
◇出演
 番組パーソナリティ 野村邦丸さん
 法律事務所ホームワン 中原俊明弁護士

2022年07月12日
法律事務所ホームワン