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文化放送『くにまるジャパン 極』に中原俊明代表弁護士が出演/648回テーマ 「マイカー通勤導入の際に会社が注意すべきこと」編

弁護士の中原です。

新型コロナウイルス感染症の影響で、公共交通機関を避け、マイカー通勤の希望が増えていると言う話を耳にします。今週の『くにまるジャパン極』では、マイカーでの通勤途中に、もし交通事故を起こしたら、会社側に責任はあるかというテーマでお話をしました。

従業員がマイカー通勤中に交通事故を起こしてしまったら、その被害者に対して、民法715条に基づく使用者責任を負うリスクがあることから、会社側が責任を負う可能性があります。使用者責任は、相手のクルマの修理費など物的損害だけではなく、ケガの治療費や慰謝料など人的損害も対象となり、高額賠償を求められるケースも考えられます。

ポイントとして、「事業執行性の要件を満たすかどうか」です。これは交通事故を起こした行為が、使用者の事業執行中であると信頼できる外観を有していたかどうかが基準とされます。分かりやすく説明すると、たとえば宅配便のドライバーが、制服を着て、会社のロゴ入りのクルマを運転している途中に事故を起こしたら、これは信頼できる外観といえるわけです。

これが、スーツ姿でマイカーを運転していた場合の事故は、被害者が一目で「この人は仕事中」と判断できるものではないですし、会社の仕事そのものと密接な関連も認められないので、基本的に会社が責任を負うことはない、と考えられます。もちろん、会社がマイカー通勤を禁止していて、従業員がそれをちゃんと知っていたのに、無断でマイカー通勤、挙句に事故を起こした場合は、会社の責任は認められないでしょう。

一方で、会社の責任が認められるケースがあるとすれば、会社がそのクルマの使用を命令して、どんどん使えと促したり、容認していたりすれば、例外的に責任を負うと判断されることもあります。たとえばマイカー通勤を黙認して、駐車場を使わせていた…というケースでは、従業員が仕事帰りに起こした事故で、会社の責任を認めています。また、会社がマイカー通勤を前提に通勤手当を支給していたケースでも、積極的に容認したとして従業員が通勤途中に起こした事故の責任が認められました。ただ、従業員が通勤のためだけにマイカーを利用していて、会社も近くに駐車場を借りていたという場合でも、駐車料金は利用者が各自で負担、会社側は燃料費も維持費も支出していなかった場合、通勤途中の事故で会社の責任を認めなかったケースもあります。

会社によりマイカー通勤を容認せざるを得ない場合もあると思いますが、大切なのは従業員のマイカー利用が純粋に通勤目的であると客観的に明らかにしておくことになります。

具体的には、従業員のマイカー通勤を原則禁止し、会社から事前の許可を得た場合に限って認める運用とした上で、運転中の遵守事項、駐車料金やガソリン代などの手当の有無や内容、会社の免責事項、そして十分な補償額の任意保険加入を義務付ける社内規定を設け、それを従業員に周知徹底させたことを証拠として残しておくなど、慎重な対応が必要となりますので、通勤方法を公共交通機関からマイカーに変更されることを検討されている方は、是非、ホームワンにご相談ください。


◇日時
 毎週火曜 9:45~
◇放送局
 文化放送
◇番組名
 『くにまるジャパン極』
◇コーナー名
 「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇648回テーマ
「マイカー通勤導入の際に会社が注意すべきこと」
◇出演
 番組パーソナリティ 野村邦丸さん
 番組火曜日パートナー 西川文野さん
 法律事務所ホームワン 中原俊明弁護士

2021年09月14日
法律事務所ホームワン