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文化放送『くにまるジャパン 極』に山田冬樹代表弁護士が出演/608回テーマ 「同一労働同一賃金」編

弁護士の山田です。

今回の『くにまるジャパン極』では、正社員とパート勤務の格差の話でよく耳にする「同一労働同一賃金」のお話をしました。10月、正社員とパート勤務の格差に関する最高裁判所の判決が5つも出て話題になりました。この話は,最近出て来たように思われるかもしれませんが、実は、以前から同一労働同一賃金の規定は存在していました。

「パートタイム労働者法」と言われる法律が存在していて、正社員とパートで、仕事の内容や配置転換、転勤も全く同じ場合、同じ給料・手当を支払いなさい、という規定があります。ただ「全く同じ」という条件が厳しすぎ、ほとんど適用されることがなかったことから,法律が改正されることになりました。更に平成24年にも法改正があって同じ規制がパート以外の契約社員にも適用されるようになりました。

正社員とパートや契約社員との間で、仕事の内容や配置転換,転勤といった点で違いがあれば、労働条件に違いはあってもいいが、その違いが不合理なものであってはいけないということになりました。例えば、会社には給料以外にいろいろな手当があるものですが、中には正社員しか受け取れないものも多くあります。退職金や賞与、休暇の扱いなどでも違いがありますが、パート社員が「これは不合理ではないか」ということになり、相次いで裁判が起こされたわけです。

ただ、裁判所にとっても判断の難しいため、同じ手当でも裁判所によって,判決がわかれてしまったため,最終的に最高裁判所にまで持ち込まれたわけです。その結果,5件の裁判のうち、会社側が2勝、従業員側が3勝でした。

会社側が勝ったのは、大学のアルバイト職員がボーナスについて争ったものと,10年勤務した契約社員の退職金について争ったものです。注目すべきは後者の判決で、裁判官の中でも判断が分かれました。4人の裁判官は「正社員と1年契約の契約社員では仕事の内容も違う。退職金制度は人事の制度設計の根幹を成す存在だから企業の自由裁量を認めるべき」という理由で不合理ではないとしましたが,「退職金は長年の功労に報いるものだから契約でも長期間働いた人に支払わないのは不合理、とした裁判官も一人いました。

一方、従業員側が勝った3つの裁判は、いずれも手当に関するケースで,「年末年始の特別手当」,「病気やケガの際の有給休暇制度」,「夏季休暇などの付与について」でした。年末年始の特別手当に関しては,この季節に働かされる不利益は正社員だろうとパートだろうと同じなので、正社員だけに支給するのは不合理という結論です。

「同一労働同一賃金」と一言にいっても、仕事の内容や配置転換,転勤があるかどうか、契約社員なら何度も更改を重ねてどれくらい勤めているのか、など,それぞれの職場で様々な事情がある以上、簡単な話ではないことから,既にトラブルに巻き込まれている経営者の方も多いです。これから「同一労働同一賃金」の制度を検討したい,「正社員とパート勤務の格差にあたるかもしれない」,など,トラブルになる前に,是非,ホームワンにご相談いただければと思います。

【出演情報】
◇日時
 毎週火曜 9:45~
◇放送局
 文化放送
◇番組名
 『くにまるジャパン極』
◇コーナー名
 「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇608回テーマ
「同一労働同一賃金」
◇出演
 番組パーソナリティ 野村邦丸さん
 番組火曜日パートナー 西川文野さん
 法律事務所ホームワン 山田冬樹弁護士

2020年12月08日
法律事務所ホームワン