文化放送『くにまるジャパン 極』に中原俊明代表弁護士が出演/398回テーマ 「職場での旧姓使用」編

2016年11月01日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

代表の中原です。

本日の『くにまるジャパン極』では,「職場で旧姓を使用する権利」というテーマでお話をしてきました。先日,結婚後も職場で旧姓を使用したいと訴えた女性が,職場での旧姓使用が認められなかったという裁判がありました。

この事件は,日大三高・中の女性教諭が,結婚後,職場で旧姓の使用を認められず,訴えを起こしたというもので,旧姓でずっと勤務してきたことや,教材を執筆するなど,せっかくこの名前で築いてきたキャリアをなくしたくない,という思いから訴えを起こしたんです。結局,主張は認められず,一審敗訴となりました。報道では,控訴も考えているようです。

とはいえ,国会議員などは,芸名でも許されているのに不思議ですよね。このケースのように旧姓で,ある程度社会的実績のある方の場合,結婚後,旧姓を使用することが出来ないのは不利な側面があるのは確かです。

去年,夫婦別姓が争点となった裁判で,最高裁は「夫婦同姓は違憲ではない」と判断しました。理由の一つが「夫婦が同じ姓を名乗ることは,婚姻前の姓を通称として使うことまで許さないものではない。最近は婚姻前の姓を通称として使用することが社会的に広まっているので,夫婦同姓の不利益は,このことで一定程度緩和され得る。」というものでした。
それにも関わらず,今回の裁判では旧姓の使用が認められなかったわけです。ただ,今回の事件でも,旧姓の使用は「婚姻前に築いた個人の信用や評価の基礎となるもので,通称として使う利益は法律上保護される」と認めていました。しかしながら,学校側が職員の特定のため戸籍使用を求めることは合理性があるとして,学校側の主張が通ったのです。
この辺りは,法律で明文化されていないので,実際は経営者の判断に委ねられることが多い部分です。

また,今回の裁判は,女性の社会進出に逆行している…といった論調も多く出ています。
たとえば,今年4月に成立した「女性活躍推進法」がありますが,この法律では三百人を越える事業主は,職場の女性比率や労働状況を踏まえ,女性の活躍推進に向けた行動計画を作り国に届出が必要です。計画の中で,女性が出産や育児をきっかけに退職する傾向にないか,管理職になっても仕事と家庭を両立できる環境があるかなど,具体的な課題分析と取り組みを定め,目標数値を設定しなければなりません。このように国が働く女性の支援を強めているという背景からも時代錯誤だということでしょう。

なお,今回のケースとは逆に,結婚した後に社会的実績やキャリアを積んだ人が離婚した場合はですが,離婚すると,法律上「復氏」といって,元の「氏」,苗字に復するという言い方をしますが,苗字は婚姻前の姓に戻ってしまいます。なので,結婚していた時の苗字をそのまま使いたい場合には,離婚した日から三か月以内,ですから離婚届と同時に届出すれば,戸籍上も結婚した時の苗字のままでいることができます。
また,三か月経過後も,裁判所に変更許可の申し立てはできますが,「やむを得ない事由」がないと認められません。旧姓に戻すか,今のままでいるか,しっかり考えて選ぶ必要があります。

結婚に伴う苗字の変更の問題であっても,人格権や労働問題など,いろいろな法律問題が含まれています。これらの問題に関しても,弁護士は法律のスペシャリストですから,いろいろな視点からアドバイスすることができますので,ぜひご相談いただければと思います。

【出演情報】
◇日時
 毎週火曜 9:45~
◇放送局
 文化放送(関東エリア)
◇番組名
 『くにまるジャパン 極』
◇コーナー名
 「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇398回テーマ
 「職場での旧姓使用」編
◇出演
 番組MC 野村邦丸さん
 番組パーソナリティ 鈴木純子さん
 法律事務所ホームワン 中原俊明 代表弁護士