貸借対照表(B/S)のチェックポイント

銀行員が貸したくなる決算書、貸したがらない決算書

現金・預金

現金預金は多いほど、銀行の評価は高くなります。これはいざというときに、厚い資金手当を可能にするからです。

しかし、銀行から定期預金を勧められたりしても、資金的によほど余裕があるときを除いて、定期預金はすべきではありません。

現預金が多ければ多いに越したことはありませんが、銀行が重視するポイントは、現金・預金が月商の何か月分あるかということです。月商の3か月分が理想ですが、少なくとも月商の1か月分はほしいところです。

銀行から融資を受ける場合、定期預金の開設を求められることがあります。しかし、「主要行等向けの総合的な監督指針( 平成21年12月)Ⅲ-3-1-6-2」は、優越的地位の濫用を禁止する独占禁止法の観点から、「過度な協力預金」を監督対象としています。定期預金はいざというときに自由に使えないお金ですから、資金的に相当余裕ある場合でなければ、すべきものではありません。

ところで、銀行は粉飾決算を最も警戒します。現金は多ければ多いほど良いと申し上げましたが、逆に現金が多すぎると、銀行は不審に思います。それだけ現金があれば利息を払ってまで借りる必要はないからです。逆に、銀行から、使途不明金等を(預金とは違って)外部から見えにくい現金に計上しているのではないかと疑われることもあります。また、銀行は自行以外の預金について、実際の残高があるかどうか確認できないため、決算書を提出する際に、他行の残高証明書を添付した方がよいでしょう。

売掛金

売掛金が多すぎると、銀行から不良債権、資金繰り悪化、粉飾決算を疑われます。売掛金の回収サイクルは長くても3ケ月です。だとすれば、年商が12億円なら、いくら掛け売りが多くても、売掛金は3億円以内に納まるのが普通です。それが6億円もあったら、その6億円の半分くらいは不良債権ではないかと、銀行から疑われますし、年商の伸びに比べて売掛金の急増は資金繰りの悪化と捉えられます。また粉飾決算をしている会社の多くが、売掛金の部分で資産を膨らませていますので、その可能性も疑われます。

経営状況の悪い会社の決算書類を見ると、毎年同じ会社の同じ金額が売掛金として出てくることが多いのですが、不良債権以外の何物でもありません。このようなものを資産として計上しても百害あって一利もありません。

そもそも、売掛金の回収サイクルは長くても3ケ月です。それを超える売掛金があれば、不良債権の存在を疑われて当然です。

さらには、架空売上による粉飾決算の疑いさえ持たれかねません。平成21年11月東証マザースに上場した株式会社エフオーアイは、上場したわずか半年後の平成22年5月、粉飾決算が発覚、上場廃止、破産に追い込まれました。直近の3 月期の連結売上高118 億円に対して100 億円が架空という、極めて悪質なものでした。同社は、年商に対し売掛金が過大なため、上場当時から一部専門家から疑いの目を向けられていました。

貸付金

中小企業の決算を見ると、多額の社長への貸付金が計上されていることがあります。こうした会社の大抵は、資金繰りが厳しい会社です。さらには、取引相手に対するリベートを表に出さないように、社長への貸付金として処理している会社もあります。これも銀行には良い印象は与えません。銀行から運転資金として融資されたお金を、他の企業に貸し付けるという行為は、使途違反として銀行が最も嫌う行為の一つです。

中小企業の決算で貸付金が計上されている場合、その殆どが社長への貸付です。表には出したくない使途不明金が、社長貸付にされていることが多いようです。こうした貸付が常態化していたり、貸付金の相手方の残高が前期と同じ場合は、取立不能債権として「資産性なし(価値がゼロ)」とみなされてしまいます。

社員の住宅資金として貸したとか、理由のある貸付金ならともかく、理由のない貸付金が存在すれば、そのこと自体、銀行からの信用を失わせます。

銀行融資を他の会社へ貸すのは厳禁です。それが子会社相手の貸付であったとしてもです。

仮払金

仮払金が多ければ粉飾を疑われます。通常仮払金というのは、そうそう多額になる筋合いの項目ではありません。しかし、企業によっては多額の仮払金を計上しているケースがあります。そうすると銀行は当然「怪しい」と考えます。仮払金とは後に清算する目的、仮に先渡しするお金ですが、黒字決算を作るために、将来の清算の必要のないものも仮払い金にしてしまっている場合、使途不明金を仮払にする場合もあります。

銀行では、仮払金を「雑勘定」として扱います。正常な取引では発生しない勘定科目であり、「経理の管理体制が杜撰・経理の精算が不明瞭」と受け取られてしまう可能性があります。

たとえば社員が長期出張する場合、社員に20万円を仮払いし、出張から帰ってきた時点で清算しますが、仮払後&清算前の段階では、この20万円は仮払金として、流動資産に計上されます。ただ、中には本来経費として損金処理すべきものを、仮払金として計上し、赤字決算を回避しているような場合があります。本来は、まだ精算できないために、仮払として資産に残すのですが、先の例では出張も終わり、清算の必要もなくなっているのに、そのまま仮払金として資産計上したままにしていることがあるのです。

或いは、支出の目的を隠すために仮払金として計上している例もあるようです。例えば、取引先が資金繰りに窮し、応援するために商品納品前に取引先に代金を先渡ししたとします。ただ、それだと銀行への通りが悪いために仮払とするのです。こうした取引をするのは、今この大口の取引先が倒れられると、売上が減ってしまい、資金が回らなくなってしまうからです。ですから、取引相手同様、こうした資金を出した会社も苦しいのです。そんな会社に銀行が融資したがらないのは当然です。

銀行も、仮払金の額が多額だと、粉飾決算を疑ってきます。相手方の残高が前期と同じ場合は、取立不能債権として「資産性なし(価値がゼロ)」とみなされます。

こうした粉飾は、銀行融資の停止を招きかねませんから、絶対避けるべきです。実際に仮払の必要があって載せている場合は、備考欄にその旨を記載したうえで、銀行に説明し、あらぬ疑いをかけられないようにすべきでしょう。

投資

ゴルフ会員権は個人で持ちましょう。会社のお金で買って、会社の資産とした場合、いざ売るとしても簡単に売れず、その分資金繰りを圧迫させることになります。それにはっきり言ってこれは公私混同です。さらに相場が下がれば損も出ます。銀行員はサラリーマンですから、心情的にも、社長のこうした姿勢には良い印象を持ちません。

ワンマン会社の場合、社長個人で買うべきものを会社に買わせている場合があります。これが、飲食費や本くらいなら可愛いいものですが、社長が利用するゴルフ会員権とか、リゾート会員権とかを、接待に必要だから、福利厚生に使うからという理屈をつけて、会社のお金で買っていることがあります。ゴルフ会員権を会社の資産にしておけば、年会費も経費で落ちるメリットもあるので、このようにしているわけですが、銀行からすれば「無駄な出費をして資金繰りを悪くしている」としか見えず、良い評価は受けません。ほかにも、多額の保険積立金なども同様、事業には不要の投資として、良い評価は受けません。

借入金

貸借対照表日の翌日から起算して1年以内に支払の期限が到来する債務を流動負債といい、それ以外の負債を固定負債といいます(1年基準)。短期借入より長期借入の方が、貸口が多いより少ない方が、毎月の返済額が少なくなるので、資金繰りが良くなります。金利が高いより低い方が、返済効率が良いですから、やはり資金繰りが良くなります。ですから、銀行融資を得るためには、短期借入と長期借入のバランスを図り、ノンバンクからは借り入れをすることなく、絶えず融資ごとに貸口をまとめる交渉努力が必要です。

銀行からは各勘定科目ごとの明細の提出を求められるため、借入が何口あり、どこから借入をしているかも細かくチェックされます。

金利が高いノンバンクからの借入があれば、まず借入は難しくなります。高い金利のノンバンクから、借りると金利が高い分資金繰りは悪化します。そもそも、ノンバンクから借りていること自体、他の銀行から借りられなかったことを意味しますから、他の銀行も貸さないところをうちが貸せるかということになります。

ノンバンクからの借り入れを明細に載せないことで、銀行を騙そうとしてもそうは行きません。年間の支払い利息と、借入金総額から、その会社が平均どのくらいの金利で借り入れを行っているかが分かるからです(「前期支払利息÷(前々期長短借入金+前期長短借入金)÷2」で、計算。)。利息の平均が7%~8%になっていれば、ノンバンクからの借り入れを疑われます。

滞納税金

融資を申し込む際に特に気をつけなければならないのが、税金等の未納です。税金や社会保険料関係の未納がある場合、銀行のプロパー融資はまず無理です。保証協会付融資についても、税金等の分納が承認されることが必要ですし、それがクリアされてもなお融資は厳しいと言わざるをえません。

源泉徴収した所得税は、原則として、給与などを実際に支払った月の翌月10日までに国に納めなければなりませんが、売上の落ちた月などは未納になってしまうのです(従業員が9人以下の場合は、半年一括納付の特例があります)。売上金が急に伸びたがために、消費税が払えないということもあります。滞納で多いのは消費税です。決算が赤字でも消費税は払わなければなりません、消費税を納付するため毎月預金していればいいのですが、それを怠り、消費税を滞納してしまう例がよくあります。

こうした税金滞納がある場合、プロパーが無理でも、信用保証協会保証付で融資を受けられるかどうかということになりますが、少なくとも分割納付の承認を取る必要がありますし、それでも融資が受けられるかというと大変厳しいのが現状です。