契約法務

暴力団排除条項

暴力団排除条例(暴排条例)

正式には暴力団排除条例と言います。暴排条例は、地方公共団体によって施行されている、暴力団およびその影響力を排除することを目的とする各条例の総称のことです。2010年以降、都道府県単位での制定が広がり、2011年10月1日に東京都・沖縄県で条例が施行されたことで、全都道府県で施行された形です。

暴対法が暴力団関係者を取り締まる法律であるのに対し、暴対条例は一般市民が暴力団関係者と関係を持たないようにするための条例です。規制内容は各都道府県によって異なります。

東京都暴排条例

東京都暴力団排除条例は規制が次の二本立てになっているところに特徴があります。

1 「規制対象者」に対する利益供与の禁止

「規制対象者」とは暴力団員、準構成員、フロント企業従業員、利益供与規定に繰り返し違反し氏名を公表された一般人等を指します。これらのものに利益供与をすると、罰金を科せられます

2 「暴力団関係者」でないことを契約の際確認し、契約上暴排条項を設ける義務

「暴力団関係者」とは、規制対象者より範囲が広く、暴力団又は暴力団員と密接な関係を有する者(共生者)も含まれます。契約確認義務、暴排条項規定義務は努力義務で、罰則規定はありません。

http://www.reiki.metro.tokyo.jp/reiki_honbun/g1014199001.html

暴力団排除条項(暴排条項)とは

暴排条項は、契約の相手方が暴力団関係者だと分かった場合に、契約を無催告解除できるようにした規定です。東京都は契約書に暴排条項を設けることを努力義務化しています。以下の点に注意してください。

  • 催告の上解除できるという規定ですと、都条例には違反します。
  • 反社会的勢力についても排除できるように規定すること(反社条項がベター)。
  • 属性要件のみならず、行為要件(後記モデル条項第2条4)を設けた方が使い勝手がよくなります。
  • 相手方が、暴力団関係者を下請にしたり、暴力団関係者から紹介を受けた業者を下請にした場合、是正請求できることを規定すること、同請求に対応なかった場合契約を無催告解除できるように規定することが、都条例では求められています。

暴力団排除を行わないことは企業リスク

改正後の東京都公共工事契約関係暴力等対策措置要綱が、平成22年11月15日から施行され、暴力団等の対象者は 一般競争入札、指名競争入札、随意契約の何れからも排除されます。改正前は公共工事契約だけが対象でしたが、新たに測量、設計、地質調査、清掃業務及び警備業務などの委託契約、物品の売払い・買入れ、物件の借入れ、修繕の請負契約等も対象となりました。

全国銀行協会では、銀行取引約定書に盛り込むべき暴力団排除条項の参考例を加盟銀行に通知するなど、銀行取引全体からの反社会的勢力の排除を推進しています。これを受けて、各銀行も銀行取引約定書などに暴力団排除条項を盛り込み、暴力団排除を進めています。

最近の企業間契約の殆どに暴排条項が取り込まれており、共生者と扱われると取引を打ち切られます。

平成20年3月、スルガコーポレーションが立退交渉を依頼していた不動産会社の社長が弁護士法違反(非弁行為)の疑いで逮捕。同社の反社企業とのつながりがスキャンダル化。株価はストップ安となり、会長兼社長が辞任、金融機関も融資をストップしたため、破たん。民事再生法適用を申請、上場も廃止となりました。

建設業法でも暴力団員等が欠格事由に

建設業法が改正され、暴力団員であること等を、建設業の許可に係る欠格要件及び取消事由に追加されました。改正法は平成27年4月1日から施行されます。改正後の建設業法8条によれば、次の者は建設業の許可が受けられないことになりました。

  • 暴対法第2条第6号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者(9号)
  • 法人でその役員等又は政令で定める使用人のうちに、…第9号…に該当する者のあるもの(11号)
  • 暴力団員等がその事業活動を支配する者(13号)

改正前は「役員」となっていたのが「役員等」と変更になりました。「役員等」には次の者が含まれます。

  • 業務を執行する社員、取締役、執行役
  • これらに準ずる者
  • 相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対しア、イに規定する者と同等以上の支配力を有するものと認められる者

許可申請時には「様式第12号」の調書を提出する必要がありますが、そこには役員等として「総株主の議決権の100分の5以上を有する株主」も記載するものとされています。

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暴排条項のモデル規定

  • 甲及び乙は、それぞれ相手方(業務を執行する役員、取締役、執行役又はこれらに準ずる役員を含む。)が以下の各号に該当する者(以下「反社会的勢力等」という。)であることが判明した場合は、何らの催告又は通知等を要せず、本契約を解除することができる。
    • 暴力団(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号。以下「暴対法」という。)第2条第2号に規定する暴力団をいう。以下同じ。)
    • 暴力団員(暴対法第2条第6号に規定する暴力団員をいう。以下同じ。)
    • 暴力団準構成員(暴力団員以外の暴力団と関係を有する者であって、暴力団の威力を背景に暴力的不法行為等を行うおそれがあるもの又は暴力団若しくは暴力団員に対し資金、武器等の供給を行うなど暴力団の維持若しくは運営に協力し、若しくは関与するものをいう。以下同じ。)
    • 暴力団関係企業(暴力団員が実質的にその経営に関与している企業、暴力団準構成員若しくは元暴力団員が経営する企業で暴力団に資金提供を行う等暴力団の維持若しくは運営に積極的に協力し若しくは関与するもの又は業務の遂行等において積極的に暴力団を利用し、暴力団の維持若しくは運営に協力している企業をいう。)
    • 総会屋等(総会屋その他企業を対象に不正な利益を求めて暴力的不法行為等を行うおそれがあり、市民生活の安全に脅威を与える者をいう。)
    • 社会運動等標ぼうゴロ(社会運動若しくは政治活動を仮装し、又は標ぼうして、不正な利益を求めて暴力的不法行為等を行うおそれがあり、市民生活の安全に脅威を与える者をいう。)
    • 特殊知能暴力集団等(暴力団との関係を背景に、その威力を用い、又は暴力団と資金的な繋がりを有し、構造的な不正の中核となっている集団又は個人をいう。)
    • 準暴力団又は準暴力団構成員(平成25年3月7日付け警察庁通達「準暴力団に関する実態解明及び取締りの強化について」に規定される、いわゆる「半グレ」と呼ばれる集団又は個人をいう。)
  • 甲及び乙は、それぞれ相手方(業務を執行する役員、取締役、執行役又はこれらに準ずる役員を含む。)が反社会的勢力等と次の各号の一つにでも該当する関係を有することが判明した場合は、何らの催告又は通知等を要せず、本契約を解除することができる。
    • 反社会的勢力等によって、経営を支配される関係
    • 反社会的勢力が、その経営に実質的に関与している関係
    • 自己または第三者の不正の利益を図り、又は第三者に損害を与えるなど、反社会的勢力を利用している関係
    • 反社会的勢力等に対して資金を提供し、または便宜を供与するなどの関係
    • その他役員または経営に実質的に関与している者が、反社会的勢力等との非難されるべき関係
  • 甲及び乙は、それぞれ相手方(業務を執行する役員、取締役、執行役又はこれらに準ずる役員を含む。)が自らまたは第三者を利用して次の各号にでも該当する行為をした場合は、何らの催告を要せず、本契約を解除することができる。
    • 暴力的な要求行為
    • 法的な責任を超えた要求行為
    • 取引に関して脅迫的な言動をし、または暴力を用いる行為
    • 風説を流布し、偽計または威力を用いて甲又は乙及び甲又は乙関係者の信用を棄損し、又は業務を妨害する行為
    • その他前記各号に準ずる行為

    ※不動産賃貸の場合は以下の行為についても賃借人に表明保証をさせるべきです。

    • 本物件内、共用部分等に反社会的勢力等との関係を感知させる名称、看板、代紋、提灯等を掲示する行為
    • 本件に反社会的勢力等の関係者を居住させ、あるいは反復継続して出入りさせる行為
    • 本物件を反社会的勢力等の事務所として使用する行為
    • 本物件の全部または一部を、反社会的勢力等に転貸する行為
    • 本物件、共用部分その他本物件周辺において、暴行、傷害、脅迫、恐喝、器物損壊、監禁、凶器準備集合、賭博、覚せい剤所持使用、銃刀法刀剣類所持等の犯罪行為を行う行為
    • 甲又は乙は、それぞれ相手方又は相手方の下請又は再委託先業者(下請又は再委託契約が数次にわたるときには、その全てを含む。以下同じ。)が、第1に該当しないことを表明し、かつ保証し、将来及び現在も将来も同項もしくは第2項各号に該当しないことを表明し、かつ、保証する。
    • 甲又は乙は、その下請け又は再委託先業者が前号に該当することが契約後に判明した場合には、直ちに契約を解除し、又は契約解除のための措置をとらねばならない。
    • 甲及び乙が、相手方が前号の規定に反した場合には、本契約を解除することができる。
    • ●は、●又は●の下請もしくは再委託先事業者が、反社会的勢力から不当利得要求は業務妨害の不当介入を受けたときは、これを拒否し、又は下請けもしくは再委託事業者をしてこれを拒否させるとともに、不当介入があった時点で速やかに不当介入の事実を相手方に報告し、相手方の捜査機関への通報及び相手方の報告に必要な協力を行うものとする。
    • 甲又は乙が前号の規定に違反した場合、相手方は何らの催告を要さずに、本契約を解除することができる。
  • 甲又は乙が、本条各項の規定により本契約を解除した場合には、その相手方に損害を生じても何らこれを賠償ないし補償することは要せず、また、かかる解除により甲又は乙に損害が生じたときは、解除された方はその損害を賠償するものとする。

    参照:暴追東京ねっとわーくvol.39

    以下の契約類型についての条項例を紹介します。

    不動産売買契約における条項例
    http://www.police.pref.osaka.jp/05bouhan/boutai/bouhai_jyourei/pdf/baibai.pdf

    建築請負契約における条項例
    http://www.nikkenren.com/about/pdf/2010_0420_model.pdf

    一般社団法人不動産協会
    https://www.fdk.or.jp/f_suggestion/pdf/comp_chintai.pdf

暴排条項を新設した場合の印紙税

暴排条項を新設するための変更基本契約書は課税文書に該当しないと、国税庁のタックスアンサーにあります。

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