下請法対象となる4つの取引と11の禁止行為

下請法により規制対象となる下請取引

下請事業者は、親事業者への依存度が非常に高いため、親事業者が優越的立場を利用し、下請事業者に無理な条件を強いる場合があります。下請法は独占禁止法の特別法で、親事業者による「優越的地位の濫用」を抑制し、下請事業者の利益を保護するための法律です。法律事務所ホームワンでは、下請事業者に不利益が起こらないよう、契約書類の作成、アドバイスをいたします。

取引要件

  • 製造委託
  • 修理委託
  • 情報成果物作成委託
  • 役務提供委託

資本要件

  • 製造委託、修理委託、政令が定める一部の情報成果物作成委託、役務提供委託親事業者の資本金が

    3億円を超えるとき
    → 資本金が3億円以下の事業者への委託取引が対象となる

    1000万円超、3億円以下のとき
    → 資本金が1千万円以下の事業者への委託取引が対象となる

  • その他の情報成果物作成委託・役務提供委託親事業者の資本金が

    5000万円を超えるとき
    → 資本金が5000万円以下の事業者への委託取引が対象となる

    1000万円超、5000万円以下のとき
    → 資本金が1千万円以下の事業者への委託取引が対象となる

トンネル会社規制

ある事業者の資本金が3億円超のため、自社が直接、下請事業者に委託をすれば下請法の対象となる場合、資本金3億円以下の子会社を設立し、その子会社を通じて委託取引を行っている場合に、(1)親会社-子会社の支配関係、(2)関係事業者間の取引実態が一定の要件を共に満たせば、その子会社は、親事業者とみなされて下請法の適用を受けることになります

下請法により親事業者が負わされる義務

書面の交付義務(3条)

公正取引委員会規則で定めるところにより下請事業者の給付の内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない

下請代金の支払期日を定める義務(2条の2)

下請代金の支払期日は、検品の有無にかかわらず、親事業者が下請事業者の給付を受領した日から起算して、60日内のできるだけ短い期間で定められなければならない。

書類の作成・保存義務(5条)

下請取引が完了したとき、取引記録を作成し、2年間保存しなければならない。

遅延利息の支払い義務(4条の2)

支払期日までに下請代金を支払わなかった場合、納付日から60日を経過した日から支払あるまで年14.6%の割合による遅延利息を支払わなければならない。

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下請法による禁止行為

受領拒否(4条1項1号)

下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の受領を拒むこと。

例えば、A社は機械部品製造をB社に下請けに出していたが、リードタイム短縮のため、正式発注前に内示情報を出し、それに基づいてB社に事前に準備をさせていが、A社の都合で、B社に突然取引停止を言い渡し、B社がA社からの事前の内示を得て製造した部品についても、正式発注がないことを理由に引き取りを拒否したA社の行為がこれに該当する。

下請代金の支払い遅延(4条1項2号)

下請代金をその支払期日の経過後なお支払わないこと。

末日納品締、翌月末払の約定がありながら、下請事業者から請求書が提出されなければ支払代金の確定ができないとして、請求書の提出遅れを理由に受領後60日を超えた時点で下請代金を支払う行為、
支払日が銀行休業日のため、一方的に翌営業日に支払を遅延する行為もこれに該当する。

下請代金の減額(4条1項3号)

下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずること。

下請事業者と合意の上で単価を引き下げたが、既発注分についても新単価を適用する場合
手形払いを下請事業者の希望で現金払いに代えたが短期調達金利相当額を超える額を減ずる行為、一方的に振込手数料を差し引いて下請け代金を振り込む行為も、これに該当する。

公取委が勧告・公表する例としては、この減額案件が最多であり、特に対応に注意する必要がある。

不当返品(4条1項4号)

下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付を受領した後、下請事業者にその給付に係る物を引き取らせること。

検査を行っていないのに不良品が見つかったとして返品したり、直ちに発見できない瑕疵であっても受領後6カ月を超えて返品することはこれに該当する。

買いたたき(4条1項5号)

下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めること。

  • 原材料が高騰しているのに単価を据え置く行為
  • ISO認証取得を要請しながら単価を据え置く行為
  • 代金を決めずに発注し納品後に値切る行為
  • 休日返上で納品を急がせたが通常発注と同様の単価で買い取る行為
  • 納品を週1回から毎日に変更し下請け業者が小口納品させられたのに単価を据え置く行為
  • 100個発注すると言って割安の単価を決めた上で1個しか発注しない行為
  • 主要部品の単価を一律5%減とする行為(部品ごとに見積書を取る等の協議を経なかった)

などは、これに該当する可能性がある。

購入強制・役務の利用強制(4条1項6号)

下請事業者の給付の内容を均質にし又はその改善を図るため必要がある場合その他正当な理由がある場合を除き、自己の指定する物を強制して購入させ、又は役務を強制して利用させること。

自社の関連会社の部品を購入するよう要請する場合、これに該当する可能性がある。

報復行為(4条1項7号)

親事業者が第一号若しくは第二号に掲げる行為をしている場合若しくは第三号から前号までに掲げる行為をした場合又は親事業者について次項各号の一に該当する事実があると認められる場合に下請事業者が公正取引委員会又は中小企業庁長官に対しその事実を知らせたことを理由として、取引の数量を減じ、取引を停止し、その他不利益な取扱いをすること。

有償支給原材料等の対価の早期決済(4条2項1号)

自己に対する給付に必要な半製品、部品、附属品又は原材料を自己から購入させた場合に、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、当該原材料等を用いる給付に対する下請代金の支払期日より早い時期に、支払うべき下請代金の額から当該原材料等の対価の全部若しくは一部を控除し、又は当該原材料等の対価の全部若しくは一部を支払わせ、下請事業者の利益を不当に害すること。

3月分の工事で、自己が所有する材料を下請に買わせ、末締めの翌々月末払いのところ、その代金を4月末に到来した2月分の下請代金と相殺するようなことは許されない(5月末に到来する3月分の下請代金と相殺することは可能)。

割引困難手形の交付(4条2項2号)

下請代金の支払につき、当該下請代金の支払期日までに一般の金融機関(預金又は貯金の受入れ及び資金の融通を業とする者をいう。)による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付し、下請事業者の利益を不当に害すること。

なお、割引困難手形とは、繊維業では90日、その他の業種では120日を超える長期の手形をいう。

経済上の利益の提供要請(4条2項3号)

自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させ、下請事業者の利益を不当に害すること。

協賛金の徴収、従業員の派遣などがこれに該当する。

不当な給付内容の変更・やり直し(4条2項4号))

下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の内容を変更させ、又は下請事業者の給付を受領した後に(役務提供委託の場合は、下請事業者がその委託を受けた役務の提供をした後に)給付をやり直させ、下請事業者の利益を不当に害すること。

親事業者の都合を理由に、下請事業者に責任がないのに発注内容を変更し、変更に伴う必要な費用の一部を下請け事業者に負担させた場合が、これに該当する。

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