【過払い】特定調停を経たケースの過払い金請求について最高裁が判決

2015年09月16日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

代表の山田です。

平成27年9月15日、最高裁第三小法廷で、過払金について判決が出ました。
この判決の事案は、すでに235万円近い過払金が出ていたのに、特定調停ではそのことが全く問題にされず、貸金債務約44万円を分割して支払う内容での調停が成立してしまったというものです。しかも「本件調停の調停条項に定めるほか,申立人と相手方との間には何らの債権債務のないことを相互に確認する」との清算条項が入っていました。
過払金債権者は、この清算条項は公序良俗に反し無効と主張し、業者はこの清算条項により、過払金も存在しないことが確定したから、支払い義務はないと反論しました。
最高裁は、同清算条項が公序良俗に反するとした点は否定しましたが、特定調停は、過重な債務が返済できなくて困っている人の借金を解決する制度であるから、そこで「債権債務なし」という条項があったとすれば、それは貸金債務のことであり、過払金債務のことを言っているはずがない、との理由で235万円の過払金はなお失われていないと判断しました。
もっとも、その後調停条項に基づいて分割で支払われた44万円は、一応「裁判所の調停」とお墨付きが出て支払われたものだから「法律上の原因なく」利益を得た物ではないとして、その分の過払金の請求は認められませんでした。
平成15、6年以降、特定調停でもこのような過払金を失わせかねない清算条項がつくことはなくなりましたし、それ以前の過払金は貸付停止により時効になっているでしょうから、その点での影響は限られるでしょう。
ただ、特定調停ではない私的和解については、新たな議論を呼びそうです。従来、裁判所は、清算条項付きの和解書面があるというだけで、簡単に請求棄却判決を書いてきましたが、今後こうした紋切り型の対応は許されないことになるかもしれません。