文化放送『くにまるジャパン 極』に山田冬樹代表弁護士が出演/427回テーマ 「高次脳機能障害」編

2017年05月30日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

代表の山田です。

本日のくにまるジャパン極では,交通事故の後遺症で,「高次脳機能障害」ついてお話ししてきました。

高次脳機能障害の高次というのは「高い次元」のことで,かなり深刻な脳の機能障害という意味です。かつては,交通事故で脳に大きなダメージを受けると,亡くなられたり,歩けなくなるケースが多くありましたが,救急医療の進歩で,命を取り留めたり,普通に歩けるまで回復することも多くなってきています。ただ見た目はすっかり元気で,歩いたり喋ったりできても,仕事に熱が入らなくなったり,周りへの気遣いができなくなったり,急に怒りだしたりといったことが起きることがあります。実は脳の機能が傷ついたのが原因なのですが,そうとは理解されず,単に「怠け癖がついた」とか「最近,自分勝手すぎるんじゃないか」くらいにしか思って貰えなかったりします。会社の中でも,だんだん浮いた存在になり,ひどい場合は会社をクビになったりすることもあります。

高次脳機能障害は次の4つに分けて考えられます。
まず「コミュニケーション能力」。これは相手の言うことが理解できない,かかってきた電話の内容を伝えられない,長い言葉をしゃべれない,といったものです。
次に「問題解決能力」。自分でうまく手順を組み立てられず,人の指示がないと物事ができないといった症状です。
三番目は「作業を継続して耐える能力」。根気が続かないで,普通の人よりも多く休憩を取る必要があるなどの症状。
最後は「協調性」,怒りっぽい,すぐ人に頼る,立場の上下に応じた言葉づかいができない,空気が読めない,一つのことにこだわって他のことができない…といったものがあります。

後遺症の等級は,最も重い1級から14級までに分かれています。介護なしに食事もトイレも全くできないのが1級で,随時手助けがあればそうしたこともできるのが2級です。
高次脳機能障害がどの等級に当たるかというのは,先ほどの四つの能力が失われている割合により決まります。たとえば四つのうち一つでも全くできない場合や,重症のものが二つあれば3級。どれかの能力が半分くらいになっているか,相当程度失われている能力が二つあれば7級といった具合です。ただし,高次脳機能障害は,日常生活ができても,目を離すと人を傷つける,車道に飛び出す,火の始末ができない…などの症状が出ることがあります。こういう場合,つきっきりで面倒を見ざるを得ないので,1級に該当する可能性もあります。

高次脳機能障害が認められるかどうかのポイントは,「事故で脳挫傷になった」「CTやMRIで脳に傷が見つかった」「意識のない状態が6時間以上あった」「軽い意識障害が1週間以上続いた」「診断書に具体的な病名や症状が書いてある」といったことがあるかどうかです。ただ判断が難しいのは小さいお子さんや高齢者の場合です。小学生でもある程度高学年にならないと,社会的能力があるかどうかわかりません。逆に高齢者の場合は,認知症か,高次脳機能障害なのか,区別するのが難しい場合があります。

高次脳機能障害の場合,介護する家族にとっても深刻な問題です。1級,2級の場合は将来の介護料も損害賠償に含まれます。ただ,3級より下になってくると,保険会社もかなり争ってきますので,保険会社と交渉する際は,ご家族の皆さんの負担がどれだけ大変かということを,具体的,かつ分かりやすく,裁判所に訴える必要があります。

【出演情報】
◇日時
 毎週火曜 9:45~
◇放送局
 文化放送(関東エリア)
◇番組名
 『くにまるジャパン 極』
◇コーナー名
 「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇427回テーマ
 「高次脳機能障害」編
◇出演
 番組MC 野村邦丸さん
 番組パーソナリティ 鈴木純子さん
 法律事務所ホームワン 山田冬樹 代表弁護士