文化放送『くにまるジャパン 極』に小杉直樹弁護士が出演/421回テーマ 「パソコンの私的利用」編

2017年04月18日
弁護士法人 法律事務所ホームワン

弁護士の小杉です。

本日のくにまるジャパン極では,新社会人の方向けにお話しをしてきました。
4月,新社会人として第一歩を踏み出した方も多いでしょう。職場では慣れないこともたくさんあると思います。ついつい学生の気分が抜けずということもあるでしょうが,給料をもらう以上,勤務時間は仕事に専念する必要があります。法律的には,これを「職務専念義務」と呼びます。勤務時間の間は,注意力のすべてを仕事のために使って,職務にのみ従事すべき,という考え方もあるんです。

言葉通りの解釈だと,雑談もダメ,ちょっと飲み物を買うのもご法度ということになりますが,普通は,この程度の行為は問題になりません。仕事に支障が出ず,会社に迷惑をかけなければ,勤務時間中に仕事と関係ないことをしても「職務専念義務」に違反している,とはいえないと思います。息抜きがないと厳しいですよね。
ただ,インターネットに接続して仕事と無関係なサイトばかり見ているような場合は,さすがに「職務専念義務」に違反すると思います。普通は,会社がサーバーを管理していますから,社員がどんなサイトを見たのかは把握することができます。

しかし,社員に「職務専念義務」があるとは言え,社員個人のプライバシーを無視していい,ということにはなりません。社員のパソコンの閲覧履歴やメールの内容チェックは,プライバシーの侵害に当たるという面もあるわけです。個人情報保護という意味でも,社員のパソコン利用状況を調べるときは,事前に調査目的や調査方法といったルールを明らかにしておく必要がある,と言われています。

実際,部下のメールをチェックしていた上司や会社が,プライバシー侵害で訴えられた裁判が起きています。ただ,もともと会社のパソコンなので,プライバシー保護の程度は低く,判決でも,業務上の必要性や相当性があれば,無断チェックはプライバシー侵害にならない,となりました。
逆にとらえれば,何の必要性もないのに,興味本位で社員のメールを見たら,プライバシー侵害に当たる可能性があるということです。

会社側が社員のメールをチェックしたければ,業務上の必要性があるかどうか,方法が適切かを考えなければいけません。もちろん社員はプライバシーが認められるとはいっても,仕事に無関係なネットサーフィンやメールばかりしていては,「職務専念義務」に違反することになります。
そうすると給料やボーナスに影響したりとか,ひどいときにはクビになってしまう危険性もあります。これはプライバシーとはまったく別の問題ですから,仕事に影響が出ないと思っても,会社のパソコンを個人的に使うのは,できるだけきるだけ控えておくべきだと思います。

【出演情報】
◇日時
 毎週火曜 9:45~
◇放送局
 文化放送(関東エリア)
◇番組名
 『くにまるジャパン 極』
◇コーナー名
 「得々情報 暮らしインフォメーション ホームワン法律相談室」
◇421回テーマ
 「パソコンの私的利用」編
◇出演
 番組MC 野村邦丸さん
 番組パーソナリティ 鈴木純子さん
 法律事務所ホームワン 小杉直樹 弁護士