企業法務コラム

労働者健康福祉機構 障害者雇用率について虚偽報告

全国36の労災病院を運営する独立行政法人「労働者健康福祉機構」(川崎市)が、うその障害者雇用率を報告していた問題で、厚生労働省は17日、同機構を障害者雇用促進法違反(虚偽報告)の疑いで横浜地検に告発した。
厚労省によると、同機構は2012年、職員に占める障害者の雇用率が実際は0.94%だったのを2.12%、13年には1.42%を2.32%として同省に虚偽報告し、法定雇用率を達成しているように見せかけていた。虚偽報告は少なくとも10年から続いていたという。

※参照
2014年11月17日 毎日新聞
労働者健康福祉機構:障害者雇用率うそ報告で地検に告発

(評)
少し古いニュースだが、12月1日付の当トピックスで、障害者の法定雇用率のことを取り上げたので、ここで紹介する。
独立行政法人の法定雇用率は職員数の2.3%(12年以前は2.1%)だから、6割増しでごまかしていたことになる。労働者健康福祉機構は厚労省のおひざ元ともいうべき組織。その独法が虚偽報告したというのではシャレにならない。
障害者雇用促進法は、法定雇用率を定め、雇用率を達成できなかった場合は納付金を納めさせるが罰金までは科されない。しかし、必要な報告をしなかったり、虚偽の報告をしたら罰金を科せられる。
法定雇用率を達成できなかった場合、納付金を支払う必要があるのは民間企業に限られる。障害者雇用納付金制度は、平成22年7月からは、常時雇用労働者数が200人超の企業にも適用が拡大され、平成27年4月からは、常時雇用労働者数が100人超の企業にもが拡大される。民間企業は、法定雇用率を達成できなかった場合、一人につき月5万円の納付金を支払わなくてはいけない。逆に、上回ったら調整金が支給され。このため、抜き打ち調査が行われる。
納付金制度については以下を参照されたい。
http://www.jeed.or.jp/disability/koyounoufu/about_noufu.html

障害者雇用促進法第43条7項
事業主(その雇用する労働者の数が常時厚生労働省令で定める数以上である事業主に限る。)は、毎年1回、厚生労働省令で定めるところにより、身体障害者又は知的障害者である労働者の雇用に関する状況を厚生労働大臣に報告しなければならない。

第86条
事業主が次の各号のいずれかに該当するときは、30万円以下の罰金に処する。
1号 第43条第7項…の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2014年12月10日
法律事務所ホームワン