企業法務コラム

円安関連倒産増える

帝国データバンクが12月4日付で第2回「円安関連倒産の動向調査」を発表した。
2013年1月から2014年11月までの倒産企業(負債1000万円以上、法的整理のみ)の中から、円安の影響を受けて倒産した企業を抽出し、件数・負債推移、地域別、業種別、負債規模別に集計・分析したもの。「円安関連倒産」に関する調査は2014年11月11日に続き2回目となる。
調査結果の概要は次の通り。

1. 11月の「円安関連倒産」は42件判明し、3ヶ月連続で最多を更新。
  2014年1~11月の累計は301件にのぼり、前年同期(110件)の2.7倍に急増
2. 2014年は「関東」が運輸業や繊維製品卸、内装工事を中心に98件(構成比32.6%)で最も多い。
3. 業種細分類別では、累計で「運輸業」(156件、構成比36.2%)がトップ。
  以下、「繊維・衣服・繊維製品卸売業」(29件、6.7%)
 「食料品・飼料・飲料製造業」(27件、6.3%)の順

※参照
帝国データバンク 2014年12月4日付ニュースリリース
円安倒産、3ヶ月連続で最多~ 2014年は300件突破で前年同期の2.7倍、全国44都道府県で判明 ~

(評)
円安が止まらない。12月4日のニューヨーク外国為替市場では、一時およそ7年4ヶ月ぶりに1ドル=120円台まで下がった。中には「120円は通過点」なる物騒なことをいう専門家もいる。
2年で40円安、1ヶ月で10円安という急激な円安の影響で、食料品、非鉄・貴金属、建設資材等が円安の影響等で高騰を続けている。急激な円安は、中小企業の収益を圧迫している。理由は3つ。第1に輸出企業には大企業が多いのに対し、輸入企業は中小・零細企業が多い。第2に力関係から価格転嫁が難しい。第3に中小企業は資金的に余裕がないため、仕入れ価格の急激な変化に対応するだけの財務的体力がない(帝国データによれば総資本1億円未満の中小企業の売上高営業利益率はマイナス0.03%と赤字状態。自己資本比率も0.76%と債務超過の状態にある。)。
帝国データバンク東京支社情報部の内藤修氏は「円高でも円安でも倒産は発生するが、倒産が増えるのは為替変動が速い場合だ。企業に対応する時間がないためとみられる。為替の影響は通常、3~6ヶ月遅れて倒産に表れてくる。足元の円安による関連倒産は年明け以降、本格的に出てきそうだ」と警戒する。

※参照
2014年12月5日 ロイター
2倍の速度で進む円安、前回円高時に比べ関連倒産件数は3倍超

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2014年12月08日
法律事務所ホームワン