企業法務コラム

外国人旅行者 快楽派を狙え

国連世界観光機関(UNWTO)が、このほどまとめたレポートで、急増する中国人の海外旅行客を「伝統派」「文芸派」「快楽派」の3つに分類した。
最も多いのは「伝統派」。団体で行動し、誰もが知るブランド品を大量に買い込み、お土産として持ち帰る。
「文芸派」は海外旅行で様々な体験を繰り返し、自己発見を重ねる。文化や歴史に触れるのを好む。
「快楽派」の目的は、とにかく楽しむこと。高級レストランが好きで、オシャレな洋服を購入する。ショッピング施設の有無が重要で、景観・文化にはあまり関心がない。

2014年6月7日 日本経済新聞 朝刊
「中国人旅行者3タイプ 団体で行動し土産購入/体験を通じて自己発見/文化よりオシャレ楽しむ 国連機関リポート」

(評)
この3分類は、外国人全体に広げることが可能だ。そして、国ごとの傾向もあるだろう。欧米人は文芸派が多いが、ロシア人なんかは快楽派がほとんど。東南アジアは伝統派が多いが、家族で来ることが多く、子どもの知見を広めるための文芸派も多い。東南アジアでも、富裕層の若者が殆ど。といった具合だろうか(外れていたらごめんなさい)。
日本のビジット・ジャパンは、日本の伝統だったり、和食を売り込むのに熱心だが、文芸派に偏り過ぎている。クール・ジャパンも、快楽派とでななく「クールなジャパンを見てほしい」という、文芸派路線だ。
要は、消費者目線ではなく、売り手目線のマーケティングだ。要するに、「日本って素晴らしいでしょ、クールでしょ、この素晴らしさを体験してください。」という訳だ。これは日本の製造業が失敗してきた、スペック重視、技術偏重の弊を繰り返しているのではないか。うちのテレビの解像度を見てください、この色彩の再現性もすごいでしょう、というのと同じではないか。
要は、外国人が何を求めるているかが、重要で、外国人の様々なニーズに合うものを提供する必要がある。だから食の紹介も、和食に偏るのはおかしい。外国人にいきなりウニを出して、美味いだろう、と言っても、ウニの味を理解できる外国人は少ないだろう。外国人向けに、トロ、マグロ、サーモン、ハマチといった外国人向けメニューの方が分かりやすい。外国のすし屋では、外国人にもっと分かりやすいものを提供することも必要だ。ミシュランガイドを見ても分かるように、日本のイタリア料理、フランス料理のレベルは高い。ラーメン、とんかつ、カレーライスといったB級グルメは、味覚的にも分かりやすく、値段も手ごろ。これだけの観光資源を埋もれさせ、和食だけを声高に叫ぶのはもったいない。
修学旅行で京都、奈良に行っても、結局覚えているのは、友人同士のコミュニケーションだろう。外国人が京都、奈良に行っても、その本当の良さを理解するのは難しい。日本人だって、30代、40代にならないと理解できないものを、外国人に理解しろと言っても所詮無理な話だ。だからもっと分かりやすい、切り口を工夫する必要がある。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2014年06月12日
法律事務所ホームワン