企業法務コラム

パワハラ 前年比14.6%増

労働者と使用者間のトラブルを扱う全国の労働局の「個別労働紛争解決制度」に寄せられた職場の「いじめ・嫌がらせ(パワハラ)」に関する相談が、平成25年度は5万9197件と、前年度比14.6%増となり、過去最多を更新したことが5月30日、厚生労働省の集計で分かった。パワハラにまつわる相談は、「解雇」や「自己都合退職」にまつわる相談を上回り、最も多かった。労働トラブル全体の相談は、24万5783件で前年度より3.5%減った。
一方、労働局雇用均等室が25年度に扱った男女雇用機会均等法関連の労働者からの相談では、妊娠しても病院に行く時間を与えられなかったり、出産を理由に不利益な取り扱いを受けたりする「マタニティーハラスメント(マタハラ)」に関する相談が3371件と前年度より469件増加。相談の過半数はセクハラに関する相談(6183件)だが、ここ数年は減少傾向となっている。

※参照
2014年5月31日 日本経済新聞 朝刊
「労働相談、パワハラ最多 13年度、14%増の5万9000件 」

(評)
「いじめ・嫌がらせ(パワハラ)」に関する相談は、平成14年度は約6,600件、22年度は約39,000件、そして25年度が約59,000件というのだから、激増といって良い。
また、平成22年度に「労働者のメンタルヘルス不調の第一次予防の浸透手法に関する調査研究」の一環として行われた「仕事のストレスに関する全国調査」の結果によると、労働者のうち、約17人に1人(約6%)が「職場で自分がいじめにあっている(セクハラ、パワハラ含む)」と回答し、さらに約7人に1人(約15%)が「職場でいじめられている人がいる(セクハラ、パワハラ含む)」と回答している。これは、中間管理職の指導力の低下、受け手の精神的脆弱性の深化、パワハラの認知度の拡大といった要因がからんでいる。
前記調査研究では、パワハラが企業にもたらす損失として、社員の心の健康を害する(83%)、職場風土を悪くする(80%)、本人のみならず周りの士気が低下する(70%)、職場の生産性を低下させる(67%)、十分に能力発揮が出来ない」(59%)との回答がなされており、パワハラは人権問題であるともに、企業経営上の問題でもある。
「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ」は平成24年1月に厚労相宛に報告を行ったが、パワーハラスメントを次のように定義した。注意してほしいのは下の定義だと、パワハラは上司から部下に対して行われるだけでなく、先輩後輩間、同僚間、さらには部下から上司への逆パワハラも含む定義となっていることだ。
「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」パワハラに次のようなものがあるとされた。

①暴行・傷害(身体的な攻撃)
②脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)
③隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)
④業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)
⑤業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事
を与えないこと(過小な要求)
⑥私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)
自分の職場でも、このようなことがないか、チェックされたらどうだろう。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2014年06月03日
法律事務所ホームワン