企業法務コラム

高性能3Dプリンター 産学官で研究組合発足

産学官を挙げて高性能の3次元(3D)プリンターを開発・販売する研究組合が1日、発足した。民間企業27社のほか、東北大・近畿大や産業技術総合研究所が参加。名称は「次世代3D積層造形技術総合開発機構」。

2014年4月2日 日本経済新聞 
「高性能3Dプリンター 産学官で研究組合発足」

(評)
3Dプリンターは前にも取り上げたことがあるが、コンピュータで設計図を作り、この機械にデータを送ると、この機械がひとりでに樹脂や金属の粉末を溶かして、立体的な製品をつくってしまう。以前は、樹脂しか成型できないものが、金属でもできるようになり、精度も格段に上がってきている。
日本の有力企業はこれまで無関心に等しい状態だったが、ここになって慌ててきている。というのも、この機械は大変なゲームチェンジャーとなりうるからだ。日本の製造業は、優秀な金型職人のいる中小企業によってささえられてきた部分が多分にある。ところが、3Dプリンターは今まで、現場で「擦り合わせ」をし、鋳型と切削で作って来た金型を、コンピューター上で作り上げてしまう可能性を秘めている。そうなると日本の擦り合わせ技術が一気に陳腐化してしまうかもしれないのだ。
この「次世代3D積層造形技術総合開発機構」という、旧態依然とした名称の組織は、チタンなど粉末金属を材料とするプリンターを開発。人工関節や航空機の部品等、複雑な構造の金属部品をつくる予定だという。15年度までに試作品を完成し、一部を商用として売り出し、19年度末までには本格的な販売に乗り出すとのことなのだが。周回遅れの日本にどこまで追いつく力があるのかどうか。
オバマ政権は、グリーディール政策で大コケにコケたが、その汚名を挽回すべく、この3Dプリンターで製造業復興を狙っている。オバマ政権はNAMII ( National Additive anufacturing Innovation Institute ) という施設を米国内に複数設立。
国家プロジェクトとして既に立ち上げている。NAMIIにはボーイングやIBN、その他のあらゆる組織が参加し、国防総省もNASAもメンバーの一員。特に国防総省は3000万ドルを投資したと言われている。
日本が必死になって3Dプリンターを作った時点で、米国は3Dプリンターの応用技術に磨きをかけているはずだ。ハードからソフトへという流れでも、日本は完全に乗り遅れてしまっている可能性が高い。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2014年04月09日
法律事務所ホームワン