企業法務コラム

暴力団員のゴルフクラブ利用 最高裁有罪と無罪とで分かれる

平成26年3月28日、暴力団員であることを隠してゴルフ場を利用したとして、詐欺罪に問われた事件で、最高裁判所第2小法廷は1件を無罪とし、1件を有罪とした。

有罪判決
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20140401112349.pdf
無罪判決
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20140328171606.pdf

(評)
平成25年(あ)第3号事件は、宮崎県のゴルフクラブの事件で、最高裁は詐欺罪で有罪とした福岡高裁を破棄し一点無罪とした。これとは逆に、平成25年(あ)第725号事件は、長野県のゴルフクラブの事件で、被告人が高裁の有罪判決についてした上告を、最高裁が棄却し有罪判決を維持したものである。
いずれの事案でもクラブ側は利用細則または会員約款で暴力団関係者の施設利用を拒絶する旨規定していた。しかも、両判決とも同じ第2小法廷で、全く逆の結論が出たのだが、これには訳がある。
無罪判決が出た事案は、クラブハウスの出入り口に「暴力団関係者の立入り、プレーはお断りします。」との看板を立てていたものの、1)受付表に暴力団関係者かどうかを確認する欄はなく、2)その他暴力団関係者でないことを誓約させる措置は講じられておらず、3)暴力団員も、受付表に自分の住所、氏名、住所、電話番号を偽りなく記載していたという事案であった。
有罪判決の事案は、1)クラブを利用した暴力団員が「予約承り書」に苗字と名前をメンバー同士で交錯させ、乱雑に書き、それを非暴力団員である会員Aにフロントに待って行かせ、フロントが仕方なく改めて清書せざるを得ず、2)Aは入会の際、暴力団または暴力団員との交友関係はないとアンケートに答え、かつ、暴力団関係者を同伴・紹介しない旨の誓約書をクラブに提出し、3)クラブは、長野県防犯協議会事務局から提供された暴力団排除情報をデータベース化し、予約時ないし受付時に利用者の氏名が同データベースに登録されていないか、確認をしていたという事案である。
ゴルフクラブの暴対の巧拙で判決に大きな影響が出た、と言えるだろう。暴力団関係者の利用禁止はうたっていても、それが形式に堕している場合は、暴力団関係者が施設を利用しても詐欺罪とならず、実際にデータバンクを整備して暴力団排除に務めていた場合は、暴力団関係者が施設を利用すると詐欺罪になると言えるのではないか。ただ、上記の長野県のクラブでは、暴力団関係者がメンバー間で氏名を交錯させたという事情がなければ、詐欺罪が成立しなかったかもしれない。したがって、クラブ側としては受付証にプレー希望者全員に「私は暴力団員、暴力団関係者でもありません。」との記載のある誓約書に記載される措置が必要だろう。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2014年04月03日
法律事務所ホームワン