企業法務コラム

中小企業への特許料等の軽減措置

昨年成立した産業競争力強化法において、特許の国内出願及び国際出願(PCT)に関する特許料等の軽減措置が定められたが、1月14日、同法施行令が閣議決定等され、特許料等の軽減措置の詳細が決定した。
これまでの特許法等による軽減措置と比較して、①赤字に限らず広く小規模企業等に対象者を拡大し、②国内出願のみならず国際出願の料金も対象とし、③料金を3分の1にまで軽減される。
日本で国内出願・国際出願を行うと、60万円程度の料金を支払う必要があるが、この措置を利用すると21万円程度に料金が軽減される。日米欧中韓の五大特許庁の中でも最も低い料金水準になる。

軽減措置の概要は以下のとおりです。
(1)対象者
①小規模の個人事業主(従業員 20 人以下(商業又はサービス業は 5 人以下))
②事業開始後 10 年未満の個人事業主
③小規模企業(法人)(従業員 20 人以下(商業又はサービス業は 5 人以下))
④設立後 10 年未満で資本金 3 億円以下の法人
※③及び④については、大企業の子会社など支配法人のいる場合を除く。
(2)軽減措置の内容
<国内出願>
* 審査請求料 1/3 に軽減
* 特許料(1~10 年分) 1/3 に軽減
<国際出願>※日本語で行われた国際出願に限ります。
※国際出願の手続の流れは参考 3 を参照ください。
* 調査手数料、送付手数料 1/3 に軽減
(日本国特許庁による国際調査などを受けるための手数料)
* 予備審査手数料 1/3 に軽減
(国際調査に加えて、出願人の任意の請求により予備的な審査を受けるための手数料)
※国際出願に係る手数料のうち、世界知的所有権機関(WIPO)に対する以下の手数料は、手数料自体を軽減するのではなく、手数料納付後に国際出願促進交付金として交付される(実質的な手数料負担を軽減)。(対象者は(1)と同様。)
なお、予算の上限に達した場合等は、交付を行わない可能性がある。交付金の手続の詳細は後日特許庁ホームページに掲載される。
* 国際出願手数料 納付した金額の2/3 に相当する額を交付(WIPO における国際出願に関する業務に要する手数料)* 取扱手数料 納付した金額の2/3 に相当する額を交付(国際調査に加えて、WIPO における予備審査に関する業務に要する手数料)」詳細は以下の特許庁ホームページを参照。
http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/ryoukin/chusho_keigen.htm

3.施行日
平成26年4月1日より施行します。本軽減措置は、平成26年4月から平成30年3月までに特許の審査請求又は国際出願を行う場合が対象になる。特許料の軽減に関しては、平成26年4月から平成30年3月までに特許の審査請求を行った案件が対象になる。
http://www.meti.go.jp/press/2013/01/20140114001/20140114001.html

(評)
軽減措置以上に重要なことだと思うので、特許先行技術調査のことを紹介したい。
一般財団法人日本特許情報機構(JAPIO)は、中小企業や個人の出願人の皆様の知財活動を支援する目的で、平成23年度より「Japio中小企業等特許先行技術調査支援サービス」を行っている。出願人は、出願後、審査請求をし、特許庁での審査を受け、特許査定を得て初めて特許権をえることができる。日本の特許庁での登録率は60.5%(特許行政年次報告書2012年度版より)で、せっかく審査請求料を支払って審査請求された出願の約4割が拒絶されている。そこで、審査請求料を無駄にしないためには、以下の2つのための先行技術調査が大切となる。
1.事前の先行技術調査で審査請求する価値のある出願とそうでない出願をふるい分
ける
2.事前にどのような先行技術があるかを知ることにより、あらかじめ自社出願と先行技術との違いを明確にし、特許庁からのアクションに迅速に対応できるようにする
しかし、前記サービスは、審査請求前の先行技術調査であり、費用は6万3000円(消費
税込)である。

法律事務所ホームワン 代表弁護士 山田冬樹

2014年01月21日
法律事務所ホームワン